2019年6月19日(水)

メガバンク、相次ぐIT「メガ減損」 3つの共通点

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BP速報
2019/5/16 18:00
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三菱UFJフィナンシャル・グループは子会社のシステム開発中止による940億円の減損損失を発表

三菱UFJフィナンシャル・グループは子会社のシステム開発中止による940億円の減損損失を発表

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は15日、約940億円に及ぶIT(情報技術)関連の減損損失を発表した。クレジットカード子会社である三菱UFJニコスのシステム統合作業の見直しによるもの。2カ月前にはみずほフィナンシャルグループ(FG)も勘定系システムを含む固定資産の減損損失約5000億円を2019年3月期決算に計上すると発表した。メガバンクで相次ぐ巨額の「メガ減損」の深層を探ってみると、3つの共通点が浮かび上がった。

■3システム統合、さらに追加コスト

「三菱UFJニコスのシステム統合作業を進めてきたが、将来を見据えて現行計画の抜本的な見直しを決断した」。MUFGの三毛兼承社長は15日の決算説明会でこう述べた。MUFGは16年から、三菱UFJニコスの業務効率化を目的にこれまで別々に稼働していたDCカード、MUFGカード、ニコスカードそれぞれの基幹系システムの統合作業を進めてきた。22年3月期までに総額1500億円を投資する計画で、効率化により年間200億円の運用費用削減につながるとしていた。

だがMUFGは開発を進める過程で計画の見直しを余儀なくされた。「システムの複雑性から難易度が当初の想定よりも高く、完成にはさらに追加コストが必要なことに加え、急速なペイメント事業環境の変化が今後も続くと見込まれる」(三毛社長)と分かったからだ。システム統合関連資産の減損損失として19年3月期に約940億円を計上した。新システムを構築することによって、将来的にシステム統合を果たす。

■みずほFG、システム減損で「安定した収益基盤を」

みずほFGも15日、勘定系システムを含む固定資産の減損損失として5007億円を19年3月期決算に計上したと発表した。3月6日に業績予想の修正の理由として発表した案件である。

みずほFGが計上する減損損失約5000億円の大半はリテール事業部門に関わるソフトウエアに関するものだ。リテールとは個人向け事業のことであり、同事業向けのソフトは勘定系システムの中枢だ。預金口座の管理や決済、融資など、中核の銀行業務を支える巨大システムである。

みずほFGの坂井辰史社長は7月に全面稼働する新システム関連の減損などを通じて「安定した収益基盤の確立を目指す」と語った。

■フィンテックなど、長いシステム開発の間に市場変化

IT関係者の度肝を抜くメガ減損には3つの共通点がある。第1に開発費が巨額である点だ。MUFGはもともと三菱UFJニコスのシステム統合に総額1500億円を投じる計画で、みずほFGは勘定系に5000億円近い費用を投じている。多額の費用を投じた分、減価償却の負担が重くのしかかる。その重みを減損によって軽くしようという財務面での狙いが背景にある。

第2の共通点は開発期間の長さにある。MUFGの場合は22年の稼働まで約6年、みずほFGも11年3月の東日本大震災直後に大規模なシステム障害を引き起こした反省から6年がかりで全面再構築プロジェクトを進めてきた。

開発期間が長くなり、その間にフィンテックやキャッシュレス、人工知能(AI)などの新技術が普及。銀行をめぐる経営環境が変わり、システムの価値や役割を見直さざるを得なくなった。「デジタルトランスフォーメーション」(デジタル変革、DX)の時代にそぐわなくなったともいえる。

財務の面では負担が軽くなったものの、IT面の根本問題は残る。2社とも巨大なシステムを運用し続けなければいけない点だ。これが第3の共通点である。システムが巨大だと運用保守のコストもかさみ、時間もかかる。市場の変化に素早く対応することが求められるITの分野において、肥大化したシステムは経営や事業面での重荷になり続ける。

メガバンクのメガ減損は、DXの時代における巨大システム開発のリスクを改めて示した。企業はシステム開発に臨むにあたり、これまで以上に短期開発、小さく生んで大きく育てるアプローチが求められる。

(日経 xTECH/日経コンピュータ 鈴木慶太)

[日経 xTECH 2019年5月15日掲載]

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