市民9万人が司法参加 裁判員制度施行、21日で10年
9割「参加、よい経験」 高い辞退率が課題に

2019/5/15 19:12
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裁判員制度が21日で施行から10年を迎える。最高裁は15日、節目を前に「総括報告書」を公表した。裁判員などとして刑事裁判にかかわった市民は9万人に上る。裁判員の9割以上が司法に参加した経験を肯定的に捉える一方、辞退率の高さや時間、精神面の負担軽減など、解決すべき課題はなお多い。

2009年の制度開始から19年3月末までに約1万2千件の裁判員裁判が開かれ、裁判員6万8165人、補充裁判員2万3177人が選ばれた。

■変わった法廷

総括報告書によると、裁判参加を「非常によい経験」「よい経験」とした裁判員は制度開始から一貫して計95%を超え、審理内容を「分かりやすかった」とした裁判員は13年以降、65%前後で推移している。

東京地裁で裁判員を務めた40代の男性会社員は「法律知識がなくても、常識的に身につけてきた感覚で判断できた」と振り返る。

見て、聞いて分かる裁判――。法律知識のない市民に判断してもらうため、法廷の光景は大きく変わった。検察官や弁護士は冒頭陳述で、ゆっくりとした口調で裁判員に語りかけるようになり、事件現場の地図や写真などを手元のディスプレーに映しながら説明する手法が定着した。

自白事件の裁判で供述調書などの「書証調べ」に費やされた時間は11年の平均83.4分から18年には62.9分に減少した。報告書は、裁判官が大量の書面を読み込んで犯罪の細部まで解明する「精密司法・調書裁判」から、争点を絞って法廷での証言を中心に事実を認定する「核心司法」への転換が進んでいると評価した。

■長期審理、負担も

裁判員は量刑判断にも加わり、死刑や無期懲役という厳しい求刑とも向き合う。裁判員裁判で死刑が言い渡された被告はこれまでに計37人。このうち、千葉県松戸市の女子大生殺害事件や大阪市の路上で通行人が刺殺された事件などの5人は二審で死刑判決が破棄され、無期懲役に変更されている。

制度開始当初に3.4日だった平均期日数は18年に6.4日となり、長期化傾向にある。初公判から判決までの期間が最長だったのは、神戸地裁姫路支部で審理された殺人・逮捕監禁致死事件で、207日に及んだ。

殺人事件の現場写真などの証拠を見て、裁判員が精神的なショックを受けるケースもある。裁判員の心のケアを巡っては、裁判所が民間に委託したメンタルヘルスサポート窓口の利用は18年までに410件あり、うち9件については医療機関を紹介した。

■高い辞退率

候補者を裁判所に呼び出し、裁判員になる人を決める「選任手続き」への出席率は低下が続いていたが、18年に67.5%と改善に転じた。一方、この手続きの前などに、仕事や介護といった法定の理由で辞退が認められた候補者の割合を示す「辞退率」は18年に過去最高の67%を記録した。

選任手続きを「無断欠席」する候補者がなお3割を超えていることへの危機感は強い。あるベテラン刑事裁判官は「誰かがやってくれるだろうと考える人が少なくない。制度を根底から覆しかねない問題だ」と話す。

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