2019年6月24日(月)

ルネサス、半導体甘い読み 1~3月は7年ぶり営業赤字

エレクトロニクス
中国・台湾
2019/5/14 23:06
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半導体大手のルネサスエレクトロニクスが14日発表した2019年1~3月期決算(国際会計基準)は、本業のもうけを示す連結営業損益が12億円の赤字(前年同期は233億円の黒字)だった。会計基準の変更で単純比較できないが、1~3月の営業赤字は、東日本大震災後の経営危機下にあった12年以来。米中摩擦で世界的に半導体の販売が減速するなか、需要変動への対応の甘さなどルネサス固有の問題が業績に影を落とす。

半導体メーカーの事業環境は厳しさを増している(ルネサスエレクトロニクスの那珂工場)

「流通在庫の調整が大きな影響を及ぼしている」。同日の投資家向け電話会議でルネサスの柴田英利・最高財務責任者(CFO)はこう述べた。売上高は19%減の1502億円、最終損益は18億円の赤字(前年同期は186億円の黒字)。主力の自動車や産業機器向けの半導体需要が減ったのに加え、18年前半に「実需より在庫を作り込んでしまった」(柴田CFO)ことが尾を引いた。

ルネサスは、車や家電を制御する「マイコン」と呼ばれる半導体で世界首位だ。しかし、自動車は排ガス規制が強化された欧州市場や、景気が減速した中国の新車販売が低迷。産業機器は18年途中まで旺盛だった中国の設備投資が米中摩擦のあおりを受けて一服し、売り上げが落ち込んだ。

ただ、ルネサスの低迷は市況要因だけで片付けられない。競合するオランダNXPセミコンダクターズなど海外の競合メーカーは19年1~3月期で営業黒字を確保しているのに、ルネサスは営業赤字だったからだ。

ルネサスは11年の東日本大震災やその後の円高で経営危機に陥ったが、官民ファンド産業革新機構(現INCJ)の傘下で大規模リストラを実施して15年3月期に最終黒字化を果たした。低採算品の生産中止や好調な市況の追い風を受け、17年12月期は増収増益となり復活を印象づけた。

しかし、空前の追い風環境は、実需を上回る製品を作ってしまう一因になった。景気の波を超えて半導体の需要が増え続ける「スーパーサイクル」を巡って慎重な声が出てくると、様相は変わってきた。ルネサスの過剰在庫リスクを懸念する声が株式市場で出始めたのは18年初め。当時、ルネサスは早期に問題が収束するとみていたが、実際は長期化し、生産調整で後手に回った。「リストラという特殊な局面が続いたこともあり、ルネサスは市況の変動をいち早く読んで生産を調整する経験が足りなかった」(証券アナリスト)

それまで見えづらかった課題も浮かび上がってきた。柴田CFOは電話会議で「シェアを落としているのは事実だ」と述べた。競合企業に比べ電気自動車などの成長市場を取り込みきれていない影響や、過去に収益性の低い製品の生産を打ち切ったのが背景という。

英調査会社IHSマークイットによると、ルネサスは主力のマイコンで18年に世界シェア18.3%。首位を維持したが17年の19.9%からは縮小。「低採算品の生産終了や、それを補う新製品の不足が響いている」(IHSマークイットの杉山和弘氏)。海外勢はマイコンだけでなく、周辺部を担うアナログ半導体(センサーやパワー半導体)を組み合わせ、顧客のニーズに沿った製品でシェアを伸ばしている。株式市場での評価もルネサスが低く、17年末からの株価をみると下落率はルネサスが最も大きい。

ルネサスも手は打っている。17年2月に米インターシル、19年3月にインテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収で計1兆円を投じた。いずれもアナログ半導体の企業だ。ルネサスは両社の買収で300億円の増収効果などを見込んでいる。

だが、肝心の相乗効果には疑問の声も出ている。複数のアナリストは「データセンター向けが中心のIDTと車載や産業機器に強いルネサスとの協業の効果は見通しづらい」とみる。買収価格と買収先の純資産の差額を示す「のれん」は9000億円を超す。ルネサスが使う国際会計基準では「のれん」を定期的に費用処理する必要はないが、買収先の経営が悪化した場合、減損処理で多額の損失が発生するリスクもある。

半導体市況の先行きがみえにくいなか、19年4~6月期に採算が改善するかどうかは不透明だ。ルネサスは国内外の主要工場で生産停止に踏み切った。当初の想定に比べ期間は短くなる見通しだが、5月は平均10日前後の停止を見込む。柴田CFOは「7~9月期以降は在庫問題は解消するとみている」と話すが、米中摩擦が激化するなか、一段の在庫調整リスクはくすぶる。今後も甘い読みが続くようだと業績回復は遠のく可能性がある。

(龍元秀明、増田咲紀)

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