2019年9月19日(木)

トランプ米政権、親イスラエルを加速 米大使館移転から1年

2019/5/14 20:35
保存
共有
印刷
その他

【カイロ=飛田雅則】トランプ米政権が在イスラエル米大使館をエルサレムに移転してから14日で1年となった。米国は近く、トランプ大統領が「世紀のディール(取引)」と呼ぶ新たな中東和平案を公表するが、イスラエル寄りの内容になるとみられ、同国と対立するパレスチナ自治政府の不信感は強い。中東情勢の先行きは不透明だ。

エルサレムにある在イスラエル米大使館(12日)=共同

トランプ政権は6月初めにも和平案を発表する見通しだ。担当するクシュナー上級顧問は5月の講演で「和平案は人々の共存や安全保障などについて実現可能な文書となるだろう」と述べた。さらに「新たな視点でこの問題をとらえれば、解決策を見いだせる可能性がある」と強調した。

イスラエルとパレスチナは1993年のオスロ合意(暫定自治宣言)で、相互の承認と2つの国家で共存していく理念を共有した。その根幹である「2国家共存」をトランプ政権が支持するかどうかは不透明だ。

エルサレムの帰属は当事者の交渉での決着を原則にしてきたが、トランプ政権は国際的な非難のなか、2017年にエルサレムをイスラエルの首都と認め、18年にはイスラエル建国記念日にあたる5月14日に大使館移転を強行した。最近、米CNNテレビは米国の同盟国関係者の話として「2国家共存を期待しないほうがよい」と報じた。

トランプ氏は親イスラエル政策を進める。3月には1967年にイスラエルがシリアから奪い占領するゴラン高原をイスラエル領と承認した。クシュナー氏は、新たな和平案が双方に妥協を求めるというが、イスラエル寄りの内容になるとみられている。

トランプ政権の親イスラエル姿勢は、20年の大統領選での再選をにらみ、野党・民主党の支持基盤である「ユダヤ票」を切り崩す狙いがある。

「民主党は反ユダヤだ」。トランプ氏は最近、繰り返しこう訴えている。発端は18年の中間選挙でイスラム教徒女性初の連邦議員となった民主党のイルハン・オマル下院議員の反ユダヤ発言だ。

米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、16年の大統領選ではヒラリー・クリントン元国務長官にユダヤ人の71%が投票した。ユダヤ人が全有権者に占める割合は3%だが、富裕層が多く支持を取り付ければ多額の寄付が見込める。寄付を広告に使って全米で支持を訴えられる。

パレスチナ自治政府は和平案を拒否する構えだ。同政府の外相は5月「将来のパレスチナ国家の首都が東エルサレムであるという項目が入らなければ和平案を受け入れられない」とけん制した。

イスラエルでは4月の総選挙後、ネタニヤフ首相は政権発足に向けて連立協議を続けるが、一院制の議会で過半数を得るには和平に反対する極右政党の取り込みが不可欠だ。ネタニヤフ氏はパレスチナへの強硬姿勢を訴え支持を得てきた。「和平案は我々が望むすべてが含まれるはずだ。そうでなければ拒むだろう」と、妥協しない姿勢だ。

パレスチナのガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスは毎年、1948年のイスラエル建国で約70万人が難民となった「ナクバ(大惨事)」記念日である15日に大規模な反イスラエルのデモを主導してきた。今年もデモが起きれば、イスラエルと衝突する可能性がある。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。