米・イラン再び緊張 サウジ船攻撃にイランの影 - 日本経済新聞
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米・イラン再び緊張 サウジ船攻撃にイランの影

【ワシントン=中村亮】米国とイランの緊張が再び高まってきた。米国と同盟関係にあるサウジアラビアのタンカーなどへの破壊活動にイランが関与した可能性があると米当局は分析する。だが、イランは関与を否定している。米国はイランへの軍事的圧力を強めており、偶発的な衝突のリスクが浮上してきた。

アラブ首長国連邦(UAE)の沖合で12日、サウジアラビアのタンカー2隻、UAEの1隻、ノルウェーの1隻が攻撃を受け、船体が大きな被害を受けた。複数の米メディアは、米当局が初期段階の分析としてこの攻撃にイランや同国傘下の武装勢力が関与した可能性があるとみていると報じた。現場は原油輸送の大動脈のホルムズ海峡に近く、緊張の高まりは原油価格の上昇要因になる。

元米国務省高官のマイケル・シン氏は、12日の攻撃が、米国によるイラン産原油の全面輸入禁止制裁への報復である可能性を指摘する。米国が「テロ組織」に指定するイラン革命防衛隊は4月下旬、禁輸制裁に反発し、ホルムズ海峡を封鎖して他国の原油取引を阻止すると警告した。シン氏は「封鎖は米国の反撃リスクがあまりにも大きく、小規模の妨害に出た疑いがある」と分析する。

イラン外務省は13日、12日の攻撃に関し「地域の安定を脅かす悪巧みを働いた者に警告する」という声明を出した。徹底した調査が必要だと強調してイランの関与を否定した。米国は5月上旬にも米軍や軍関連施設に対する攻撃をイランが計画したと主張したが、イランは強く否定していた。

米国は対イラン政策で欧州側の協調を取り付ける構えだ。ポンペオ米国務長官は13日、モスクワ訪問を取りやめてブリュッセルに入り、米国が離脱したイラン核合意になおとどまる英独仏の外相と会った。米国務省のイラン担当特別代表ブライアン・フック氏は記者団に、ポンペオ氏と英独仏の外相がイランの脅威を共有したと述べた。

一方、欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は「対話が重要だ」と指摘した。

欧州は米国の対イラン強硬姿勢に同調していないが、緊張緩和を促す具体策は乏しい。米国の対イラン政策は強硬派のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)が主導し、転換させる可能性は低い。イランは核合意にとどまる条件として英独仏に原油輸出や金融決済の手段を確保するよう求めるが、これに応じるのは難しい。イランに同調すれば米国の制裁の対象になるため、欧州の民間企業は慎重な姿勢だ。

米国は軍事面でも圧力を強める。米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は13日、シャナハン国防長官代行が安全保障関連の会合で、イランが米軍を攻撃したり、核開発を加速させたりすれば最多で12万人の米兵を中東に派遣する計画を提示したと報じた。ボルトン氏の指示で練り直された新たな計画だとしている。

米国防総省は10日、地対空ミサイル「パトリオット」を中東に追加配備しイランのミサイル攻撃への迎撃態勢を強める方針だと明かした。海兵隊の上陸を支援する揚陸艦「アーリントン」の派遣も決めた。原子力空母や戦略爆撃機と合流する。

オバマ前米政権でイラン政策を担ったジャレット・ブラン氏は「イラン核合意の崩壊は現実のリスクになった」と指摘する。イランが核開発を本格的に再開すればイスラエルやサウジが追随し「核ドミノ」が起こりかねず、中東情勢が一段と緊張するのは必至だ。

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