「古墳時代の社会、伝統を証明」 古墳群の世界遺産登録

2019/5/14 18:42 (2019/5/14 20:26更新)
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国際記念物遺跡会議(イコモス)は「百舌鳥(もず)・古市古墳群」(大阪府)を世界文化遺産に登録するよう勧告した。古墳時代の文化や社会を伝える普遍的価値が認められた。古墳は国内の広範囲に分布しており、各地で保存やPRに関わる関係者は注目が高まることを期待する。一方で宮内庁が管理する「陵墓」は一般には非公開。遺産をどのように活用するかが今後の課題となる。

百舌鳥古墳群(堺市)

イコモスは国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関。登録を勧告したのは、仁徳天皇陵古墳(大山古墳、堺市)など日本政府が推薦していた49基すべて。文化庁は14日未明の記者会見で「総合的に問題なく評価された」と説明した。6月に始まるユネスコの世界遺産委員会で正式に登録が決まる見通しだ。

古墳群は市街地に近い立地で、勧告は「人々の親しみが生まれている」とプラスに評価する一方で、懸念として「都市における開発圧力」を挙げた。地域住民が保全に参加することや開発計画の影響を評価する仕組みの構築などを求めた。

特に巨大古墳の場合、保全方法はこれまでも大きな課題だった。仁徳天皇陵は周濠(しゅうごう)の沿岸など各部で傷みが目立つ。同古墳を皇室の祖先の墓である「陵墓」として管理する宮内庁は大掛かりな補修に備えて地元自治体と協議会を設置。2018年に初めて共同で発掘調査を実施した。

遺跡の活用に詳しい宗田好史・京都府立大副学長(都市計画学)は「古墳群は地元の協力がないと守れない」と指摘。「世界文化遺産への登録が、陵墓と文化財とを融合させるきっかけになるのではないか」と話す。

世界にはエジプトのピラミッドや秦の始皇帝陵など古代の巨大な墳墓が残るが、日本は都の周辺だけでなく国内各地に築かれたのが特徴だ。代表的な今回の49基のほかにも、3世紀後半から7世紀までの古墳時代に全国で築かれた古墳は大小約20万基に上る。勧告は古墳がある他地域にも朗報として伝わった。

「埼玉(さきたま)古墳群」のある埼玉県行田市の鈴木秀憲さん(77)は「地元でも登録に向けたムードが高まれば」と歓迎する。9基の大型古墳がある同古墳群は県や市が世界遺産登録を目指してきた。文化庁が推薦する候補にはなっていないが、市民がPRを続けている。登録実現を目指す市民団体会長の鈴木さんは「多くの人が足を運び、これだけの大型古墳が集まる希少さや歴史の深みを味わうきっかけになれば」と話す。

「古墳ブームのさらなる追い風になるだろう」と喜ぶのは名古屋市の担当者。同市は「志段味(しだみ)古墳群」周辺を新たな観光拠点として整備しており、4月に開業した展示施設は1カ月あまりの来場者数が延べ3万人を超えるなど好調な滑り出し。担当者は「古墳への関心が高まる中で良いタイミングの発表。志段味古墳群の魅力もしっかり伝えていく」と相乗効果に期待していた。

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