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食事は競技の生命線 タイム短縮、日常生活も恩恵

ここ10年間ほど低糖質と抗酸化の食事スタイルを試してきた。きっかけはトレイルランニングの本場アメリカで、翌日の長距離のランニングに備えてパスタやライスなど炭水化物中心の食事をしていた際、ほかのランナーやコーチが「君ほどのレベルのランナーが、まだそんなことをやっているのか」と鼻で笑われ驚いたことだった。

当時の日本では長時間のランニングには直前にエネルギー源の糖質を体内にため込むため、炭水化物を多くとるカーボローディングという食事法が主流だった。だがゆっくり100キロメートル以上を走るトレイルランニングでは体内の糖質よりも体脂肪を優先的にエネルギーに使えるようにする必要があった。そこで普段から炭水化物を少なめにする食事が常識だということだった。

半信半疑で食事内容を変えると徐々にだが体が変わっていく気がした。ポイントは炭水化物を少なめにしておかずを多めに、間食もナッツ類やチーズ類で血糖値が上がりにくい体質にすることだった。このスタイルが身につくと次第に体脂肪を効果的に使えるようになり、レースでは多くのランナーが疲労で動けなくなる最終盤でもスピードを落とさずに走ることができる。

おかずをたくさん食べる低糖質の食事を心がけている

レースだけでなく日常生活でも良い効果が表れた。以前は昼食後に必ず眠気に襲われ、ささいなことでイライラしたものだが、食事を変えると比較的穏やかな気持ちでいられるようになった。おそらく血糖値が安定し、気分のアップダウンが少なくなったためだろう。

もう一つの食事法が抗酸化である。30歳代後半からトレーニング後の疲労感が如実に表れ、その状態で無理してトレーニングを継続していると競技力を落とすばかりか体調を崩すことも増えてきた。

そこで知人の紹介もあり老化の原因とされる活性酸素を取り除く抗酸化の食事を試みた。ただ食事で十分な量を摂取するのは難しく、サプリメントを使ったがこの効果は大きかった。まずは目覚めが格段に良くなり、徐々にトレイルランに必要不可欠な上りの脚力が回復し、さらに疲れにくい体になった。加えて40歳前から悩んでいた薄毛と白髪も改善されたのは思いがけずうれしい副次効果だった。

この2つの食事法を同時に取り入れると、世界最高峰のUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)の舞台で当時は奇跡的だといわれた4位から、翌年にはこのタイムを実質的に1時間以上短縮して3位となった。順位よりもうれしかったのは、健康面だけでなく精神的にも安定した生活を取り戻すことができたことだ。

アスリートにとって食事は競技生活の生命線ともいえる。バランスを考えながらその競技特性にあう食事から栄養を戦略的に摂取することは非常に重要だ。近年は私が試みている低糖質や抗酸化以外にもさまざまな食事法が唱えられている。無理なく、長く継続できるスタイルを自分自身で探していくうちに健康を維持するあなたなりの新たな工夫と結果が生まれるかもしれない。

(プロトレイルランナー)

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