2019年5月24日(金)

経常黒字、海外投資が支え 「投資呼べない国」の面も

経済
2019/5/14 11:54
保存
共有
印刷
その他

財務省が14日発表した2018年度の国際収支速報は、経常収支が19兆4144億円の黒字だった。貿易黒字が減って5年ぶりの縮小となったが、海外投資からの配当などによる黒字は過去2番目の水準となり、経常黒字の大半を構成する。平成の30年で日本は企業による「海外投資で稼ぐ」スタイルに変わったが、巨額の黒字は投資を呼び込めない国の姿も映す。

経常収支は貿易やサービスなど、海外との取引で生じた国全体のお金の収支を表す。平成の30年間を振り返ると、1989年度(平成元年度)には約9兆円の黒字(旧基準)だった。黒字の規模は18年度までに2倍強となったが、より大きく変わったのは経常収支の構図だ。

経常収支のうち、海外子会社からの配当や海外での証券取引に伴うものは「第1次所得収支」と呼ぶ。18年度は21兆652億円と過去2番目の大きさになった。

第1次所得収支の内訳も変わった。08年度までは黒字額の8割は証券投資収益だったが、現在は直接投資収益の比率が5割に拡大し、18年度は10兆3766億円と過去最大となった。世界的な低金利により、債券運用は利益を伸ばしづらい。一方、海外の消費地に進出する動きは製造業から小売り・サービス業まで広がる。

SMBC日興証券の宮前耕也日本担当シニアエコノミストは「幅広い業種の海外展開によってこの流れは今後も続く」とみる。

輸出から輸入を差し引く貿易黒字は存在感が下がった。今の統計で比べられる98年度に16兆円あった黒字は18年度に7068億円まで縮んだ。

原材料を加工して出荷する輸出型の企業がコスト削減と海外市場の開拓を目的に海外展開を進めた。経済産業省によると1989年度に製造業の海外生産比率は6%だったが、2016年度には同24%まで伸びている。

輸入の拡大も貿易黒字を抑える。18年度は原油や天然ガスなど鉱物性燃料の輸入額が19兆円(運賃などを含む)と89年度の3倍になり、全体の4分の1近くを占める。11年3月の東日本大震災により停止したままの原子力発電所は多い。火力発電で補うため、原油高には脆弱な構造だ。

最近はインバウンドの存在感も増した。訪日客による消費額から日本人の海外旅行での消費額を差し引く旅行収支は13年度まで赤字だったが、18年度は2兆4890億円の黒字と過去最大だ。

一方で海外からの投資呼び込みは道半ばだ。直接投資収益は海外から受け取る金額から、海外に払う配当などを引いて算出する。日本は受取額が13兆円で、支払額は3兆円にとどまる。日本の黒字は他国にとって赤字となるため、海外からは「バランスを取るべきだ」との声があがる。巨額の経常黒字の裏側で、内需の活性化という大きな課題も残されている。

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報