大阪都構想、制度設計が焦点 来秋にも住民投票
維新、民意テコに前進
「大阪都構想」を巡る住民投票が2020年秋にも再び実施される見通しとなった。大阪維新の会が大阪府知事・大阪市長のダブル選で仕掛けた都構想の再チャレンジ戦略が成功。維新に圧勝をもたらした「民意」が公明党と自民党を反対から容認に突き動かしたといえる。自公が議論の席に着けば、今後は制度設計や住民の理解を広げることなどが課題となる。

「万博は新しい大阪都で迎えたい」。維新代表の松井一郎大阪市長は11日夕、記者団に語った。住民投票で賛成多数となった場合、新たにできる特別区への人事配置や庁舎整備には3~4年が必要とされる。20年秋にも住民投票ができれば、25年国際博覧会(大阪・関西万博)の前に特別区への移行が可能になることを踏まえた発言だ。
都構想に反対してきた公明や自民が一転して協力姿勢を打ち出したのは、4月のダブル選などで、維新が「反維新」陣営を圧倒したことが最大の理由だ。
有権者に信を問うため知事と市長が立場を入れ替えて出馬する維新の手法には「奇策」との批判も強かったが、結果的には反対派の翻意につながったといえる。

都構想の制度設計を議論する法定協議会(法定協)は維新と反維新派が激しく対立してきた。公明大阪府本部の佐藤茂樹代表は「これまでの法定協では問題点の指摘が中心だった」と振り返り「今後は積極的、建設的に改革を進める立場で前向きな議論をしたい」と意欲を見せる。
自民大阪府連の渡嘉敷奈緒美会長も「(都構想へのスタンスが)変わる可能性がある。ゼロベースで考え直したい」と語る。

松井氏は夏の参院選前に法定協を再開する方針だ。各党がこれまでの維新案を前提に話し合うか、改めて根本から議論し直すかなどによって進捗は変わってくるが、松井氏は「反対のための反対から方向性はがらっと変わってくる」とみており、1年程度で決着させたい考えだ。
ただ、公明は17年に住民投票に協力する合意文書を維新と水面下で締結したものの、実施時期を巡って維新と対立し、決裂した経緯がある。維新内には「今回は本気なのか慎重に見極めたい」(幹部)との声もある。
また、住民投票が実現しても、有権者の過半数の支持を得るのは容易ではない。松井氏はダブル選の圧勝を受けた記者会見で「今回の選挙を通じて、まだまだ中身を理解していないという声が多かった」と振り返った。松井氏は15年5月以来2度目となる住民投票を「ラストチャンス」と位置づける。それまでに市民の理解をどれだけ広げるかが最終的にはカギを握る。