鴻海の役員案、シャープ・戴社長が復帰
「金庫番」の黄氏は名簿になく

2019/5/10 22:13
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【台北=伊原健作】台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は10日夜、6月21日の定時株主総会で諮る董事(取締役)の選任案の名簿を開示した。創業トップの郭台銘(テリー・ゴウ)氏は董事長から一般の董事に降任する。董事長の後任候補の本命と目されていた「金庫番」、黄秋蓮・総財務長は名簿から外れた。シャープ社長として派遣した戴正呉氏が鴻海の董事に復帰し、その影響にも注目が集まる。

台湾・鴻海の郭台銘(テリー・ゴウ)董事長は10日夜、6月の総会で董事長を退くと初めて明言した(写真は6日、台北市内)

「董事長になることは絶対にない」。郭氏は10日夜に中部・台中でのイベントに出席し、董事のリストが開示されるのを見計らったようにこう強調した。4月、2020年1月の次期総統選への出馬に伴い「経営の第二線に退く」と表明していたが、6月の総会で董事長を退くと初めて明言した。

郭氏は一代で年間売上高18兆円を超える巨大製造業を築いたカリスマ経営者だ。兼職が禁じられた総統就任への道のりは長いが、野党・国民党の総統選に向けた公認候補者争いが激化するなか、政治に軸足を置く姿勢を鮮明にして支持をてこ入れする狙いとみられる。

今後の焦点は後継者選びだ。6月の総会で株主の承認を得てから董事会(取締役会)を開き、トップの董事長を選出する。台湾メディアや鴻海関係者の間では、郭氏の死別した前妻の叔母で、1974年の創業時から鴻海の財布を握り「銭ママ」と呼ばれる黄氏が本命とされていた。名簿から外れたことで可能性は消え、次期トップの行方は混沌としてきた。

今回リストに入った9人の董事候補のうち、郭氏と独立取締役に当たる「独立董事」を除く5人がトップ候補になる。

順当にリスト入りしたのが鴻海グループの副総裁で、鴻海系の台湾通信大手、亜太電信の董事長を務める呂芳銘氏だ。米ヒューレット・パッカード(HP)のアジア地区の重役から鴻海に転じ、長年にわたり郭氏を補佐する懐刀で、これまでも董事を務めてきた。

一方、呂氏と並ぶ郭氏の側近で、16年にシャープ社長に転じた戴氏がリスト入りしたのはサプライズとなった。17年にはシャープの再建に集中するために鴻海の董事を退任していた。仮に董事長となればシャープ側との兼任は困難となる。

シャープの野村勝明副社長は9日の決算会見で「戴会長兼社長がけん引するシャープの経営体制や鴻海との連携が変わることはない」とした。

また、鴻海の次の成長を担うと目される人材も名簿に入った。コネクターを手掛ける重要子会社トップ、盧松青氏は社内で「米国通」と呼ばれる。郭氏が米ホワイトハウスを訪れる際にも同行し、米中貿易摩擦が激化するなかで、重要な役割を果たしそうだ。

グループの半導体関連事業を束ねる劉揚偉氏も董事候補となった。鴻海はスマートフォン(スマホ)などの単純な受託生産での成長路線が行き詰まりつつあり、半導体など高採算の部品に期待をかけている。シャープの取締役にも名を連ね、同社の半導体技術を活用した成長戦略を担っている。

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