鈴木首相、終戦時の書寄贈 専属運転手ねぎらう

2019/5/10 19:28
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太平洋戦争終結時の首相だった鈴木貫太郎が、終戦に反対した襲撃隊からの逃避行中、専属の男性運転手をねぎらい「天空海闊(てんくうかいかつ)」と記した書の掛け軸が、千葉県野田市の鈴木貫太郎記念館に寄贈されたことが10日、同館への取材で分かった。

 鈴木貫太郎が「天空海闊」と記した書の掛け軸(4月19日、千葉県野田市)=共同

記念館によると、書は1945年8月、内閣職員として歴代首相の運転手を務めた故柄沢好三郎氏に贈った毛筆で、縦約110センチ、横約37センチの紙に書かれた。天空海闊は鈴木の座右の銘で「空や海が広々としているように、おおらかに生きよ」という意味を込めたとみられる。「これからは君たちの時代だ」と言い、手渡した。

終戦前日の8月14日、日本は無条件降伏を求めるポツダム宣言の受諾を決定。反対した一部の軍人らが15日未明に首相官邸を襲撃し、鈴木の不在を知ると東京都内の自宅へと向かった。

鈴木夫妻は着の身着のまま柄沢氏が運転する車に乗り込み自宅を後に。急な坂を上れず、警察官らに押してもらいやっと走りだした際に襲撃隊が到着し、家は焼き払われた。鈴木は柄沢氏と都内を転々とし、郊外の知人宅に10日ほど身を潜めた。そこで書をしたためたとみられる。

書は柄沢氏の長女、渥子さん(87)が昨年7月に寄贈した。鈴木は柄沢氏に、戦争を続ければ日本が分割統治される可能性を説き「敗戦ではない、終戦だ」と前向きに捉えるよう語り掛けたという。

柄沢氏は現在の高崎市出身。陸軍自動車隊で運転技術を磨き、内閣職員になった。32年に青年将校に暗殺された犬養毅や吉田茂ら歴代首相計20人の運転手を務めた。

記念館を運営する野田市教育委員会の笹川知樹学芸員は「こうした物語のある書は貴重だ」と話し、企画展での展示を検討している。〔共同〕

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