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バンタム級・井上尚、最強の勲章かけ「怪物対決」

2019/5/14 6:30
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衝撃の70秒KO劇から7カ月余り、「怪物」がリングに戻ってくる。世界ボクシング協会(WBA)バンタム級チャンピオンの井上尚弥(26、大橋)が18日(日本時間19日早朝)、英国スコットランドのグラスゴーで国際ボクシング連盟(IBF)同級王者のエマヌエル・ロドリゲス(26、プエルトリコ)と対戦する。階級最強を決めるトーナメント大会「ワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)」の決勝進出とともに、互いのベルトを懸けた王座統一戦だ。2試合連続初回KO勝ちと破竹の勢いを見せる井上尚も「過去一番の相手」と緊張感を漂わせている。

万能型のスタイルなど共通点多く

「練習中だけでなく、練習を離れたときでも気を抜けないというか。常にピリピリしている」。既に8日に現地入りして最終調整に入っている井上尚は、出発前の3日にこう語っていた。今回の試合に向けては珍しくメディア非公開で練習することもあった。初めての欧州遠征、WBSSという舞台の大きさもあるだろうが、一番の理由はやはり対戦相手だろう。

5月3日に横浜市内の大橋ジムで練習を公開した井上尚弥

5月3日に横浜市内の大橋ジムで練習を公開した井上尚弥

「南米の井上尚弥という印象。モンスター同士の一戦だ」。所属ジムの大橋秀行会長はロドリゲスをこう評する。父の井上真吾トレーナーも「ナオ(尚弥)と似たタイプ。若くてスピードがあって反応もいい。五分五分と見ている」と対戦相手を高く評価する。

確かに両者には共通点が多い。年齢は同じ26歳(井上尚は1993年4月生まれ、ロドリゲスは92年8月生まれ)。アマチュアで81戦のキャリアがある井上尚に対し、ロドリゲスは182戦を誇る。プロ戦績も井上尚の17戦全勝(15KO)に対し、ロドリゲスは19戦全勝(12KO)とひけを取らない。

2018年5月に敵地の英国に乗り込んでIBF王座を獲得。井上尚もリングサイドで観戦した10月の初防衛戦は試合序盤に拳を痛めて僅差の判定勝利だったが、スタイリッシュなボクシングはセンスを感じさせる。WBSSトーナメントでは反対のブロックで5階級制覇のレジェンド、ノニト・ドネア(36、フィリピン)が既に決勝進出を決めているが、今回の一戦が事実上の決勝戦といっても過言ではない。

18年10月、井上尚はIBF王者ロドリゲス(右から2人目)の防衛戦を米フロリダ州で視察し、初対面した=(C)WBSS

18年10月、井上尚はIBF王者ロドリゲス(右から2人目)の防衛戦を米フロリダ州で視察し、初対面した=(C)WBSS

「自分と同世代。(過去の対戦相手で)一番のっている選手だと思う」と語る井上尚にも、映し鏡のようにロドリゲスが見えているようだ。右構えのオーソドックスで、どんなパンチも打てる万能型のスタイルも近い。しかも「お互いが力を出し合える距離が同じ」(大橋会長)。昨年の2試合は身長180センチ近いジェイミー・マクドネル(英国)、サウスポーのフアンカルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)という異質なタイプのベテラン2人をひと飲みしたが、井上尚も違った展開を想定しているようだ。「今回は技術戦。カギは距離とジャブ。フェイントやカウンターの応酬になる」

ハイレベルな勝負「面白さ見せたい」

もっとも、そうした緊迫の大一番を井上尚自身は楽しみにしている風情もある。「自分はそういう試合の方が実力以上のものを出せるタイプだと思っている。毎回"秒殺"とはいかないけど、去年の2試合とは違ったボクシングの面白さを見せられれば」

2試合連続初回で倒した負の副産物か、この試合に向けての調整の過程では一時期、パンチも大振りになり、スランプも味わったという。スピードを身上とする自身のボクシングを再確認した結果、「自分が思うような理想に近い形になった」。真吾トレーナーも「普段は父として心配もあるけど、ここまで来ると楽しみしかない」と全幅の信頼を寄せる。

油断のできない相手には間違いない。ただ、パンチ1発で全てを動かせる決定力は井上尚にだけあって、ロドリゲスにはない最たるものだろう。えぐるようなボディーブローも細身のプエルトリカンには有効だ。井上尚はスピードやパンチの種類といった相手の戦力を読み切る早さも尋常ではない。「今回は技術戦」という言葉は決して静かな判定決着を指しているのではなく、ハイレベルな勝負という意味。KOで仕留める可能性は十分ありそうだ。

2団体統一王者となれば、12年にWBAとWBC(世界ボクシング評議会)ミニマム級を制した井岡一翔、14年にIBFとWBOのミニマム級で空位の王座を手にした高山勝成、17年にライトフライ級でWBA、IBF王座を統一した田口良一に続いて4人目になる。欧州で世界タイトル戦勝利となれば、国内出身ボクサーでは初めてだ。「怪物対決」を制すれば、その才能にふさわしい勲章がまた一つ加わることになる。

(山口大介)

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