米中、歩み寄り難しく トランプ氏、制裁関税第4弾も

2019/5/10 15:41 (2019/5/11 0:46更新)
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米政権は10日、2000億ドル(22兆円)分の中国製品への制裁関税を10%から25%に引き上げた。米中貿易協議は妥結間近との楽観論も市場に広がっていたが、トランプ米大統領は「中国が合意を壊そうとしている」と再び強硬姿勢に転じた。中国は報復措置を取ると表明したが、米国は制裁対象の拡大も検討しており、泥沼の関税合戦が再燃する懸念もある。

初日の閣僚級協議を終え、USTR本部を後にする中国の劉鶴副首相(9日、ワシントン)=AP

初日の閣僚級協議を終え、USTR本部を後にする中国の劉鶴副首相(9日、ワシントン)=AP

引き上げ期限を7時間後に控えた9日午後5時。ワシントンの米通商代表部(USTR)本部の玄関にライトハイザー代表とムニューシン財務長官が姿を現し、中国から来た劉鶴副首相を笑顔で出迎えた。だが夕食会を兼ねた閣僚級協議はわずか1時間強で終わり、米国は通告通り対中関税を大幅に引き上げた。

米中は10日午前も協議を継続したが、劉鶴氏は今回の訪米にあたって「特使」の肩書を得ず同行人員も絞り込んでおり、実質的な進展は見込みにくいとの観測が強い。

トランプ政権は2018年7~9月、中国の知的財産権侵害を理由に3度にわたって合計2500億ドル相当の中国製品に制裁関税を発動した。家電や家具など消費財を含む第3弾は米年末商戦への影響に配慮して追加関税率を10%に設定し、19年1月から25%に引き上げる予定だった。

発動寸前の18年12月、トランプ氏と習近平(シー・ジンピン)国家主席は直接会談し、税率上げを猶予する代わりに閣僚級協議で打開策を探ることで一致した。だが首脳会談当日にカナダの司法当局が米国の要請を受けて中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟副会長を逮捕するなど、交渉の内実は不信の連鎖だった。

両国は当初3月1日を期限に設定し、2月中旬には知的財産保護や市場開放などを盛り込んだ協定書の作成に着手した。米中交渉筋によると、中国は米国が撤廃を求める産業補助金問題でも「地方政府も含めて世界貿易機関(WTO)ルールを順守する」と譲歩しつつあったという。中国側は「国内の反発を避けるため世論対策に時間が欲しい」などと繰り返し要請し、米は交渉期限の延長に応じてきた。

ところが5月に入ると中国側は突然、補助金や技術移転など重要分野で「合意を後退させた」(ムニューシン氏)。米中交渉筋は「劉鶴氏が米国と折り合った協定案を、共産党指導部の政治局が拒んだ」と打ち明ける。盤石を誇ってきた習体制だが、国内の「弱腰批判」を無視できなくなったとの見方だ。

中国は天安門事件30年を約1カ月後に控え、政治的に敏感な時期にさしかかる。習氏が主導してきた対米交渉が決裂した印象を与えれば威信低下も避けられないだけに、報道管制を敷いてトランプ氏の強硬発言が広まらないようにしている。

関税を引き上げた第3弾は消費財が約2割を占め、米経済も返り血を浴びかねない。それでもトランプ氏が強硬策に転じたのは、株価が回復して経済面で余力ができたからだ。「ロシア疑惑」もひとまず乗り切り、米調査会社ギャラップによると、4月後半のトランプ氏の支持率は46%と過去最高水準に上昇した。

米国は中国が報復に出れば関税を課していない3250億ドル分の中国製品も制裁対象に加える方針だ。一方でトランプ氏は9日、習氏から「非常に美しい手紙」を受け取ったと記者団に明かし、電話協議の可能性に触れるなど交渉継続にも余地を残した。米中は6月の20カ国・地域(G20)首脳会議に向けて協議の立て直しを図るとみられるが、将来の覇権争いをにらんだ強硬論は両国で勢いを増しており、ハードルは少なくない。

国際通貨基金(IMF)は19年の世界経済の成長率予測を3.3%に下げたが、貿易戦争が悪化すれば成長率はさらに0.4ポイント下振れし、世界景気は好不況の節目とされる3%を下回ると警告する。「二大エンジン」の米中経済が減速すれば、弱含みつつある世界景気を失速させかねない。

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