2019年9月16日(月)

対中関税引き上げ 海外の識者はどうみる

2019/5/10 15:54
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トランプ米政権は米東部時間10日午前0時1分(日本時間同日午後1時1分)、2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に課す制裁関税を現在の10%から25%に引き上げた。中国も報復措置をとると表明しており、米中の貿易戦争はさらに激しくなる可能性が高まっている。今後の展開や世界経済への影響はどうなるのか。米中の状況に詳しい市場関係者や識者に聞いた。

「中国の輸出への打撃大きく」

■京東数字科技(JDディジッツ)の沈建光チーフエコノミスト

JDディジッツの沈建光チーフエコノミスト

JDディジッツの沈建光チーフエコノミスト

米国の2000億ドル分の中国製品に対する制裁関税の引き上げは中国経済、とりわけ輸出に大きな影響を与え、成長率の下押し圧力となる。米国市場に注力する中小の製造業にも直接的な打撃だ。関税がさらに上がるようだと、中国にある生産拠点の移転につながる可能性がある。

中国当局は複数の政策ツールを使って貿易戦争の影響を和らげようとするだろう。預金準備率や政策金利を引き下げて経済に流動性を注入するほか、製造業の増値税(付加価値税)引き下げ、不動産やインフラ投資の拡大などが考えられる。

米中が貿易協議でディール(取引)に動く可能性はまだあるとみている。仮にディールが成立せずに貿易戦争が激化した場合、双方に打撃となる。より大きな影響を受けるのは中国だろう。

(香港=木原雄士)

「米国のインフレ圧力に高まりも」

■米オハイオ州立大のオデッド・シェンカー教授

米オハイオ州立大のオデッド・シェンカー教授

米オハイオ州立大のオデッド・シェンカー教授

トランプ米政権は自らが対中交渉の態度を硬化させた理由について、中国側が既に合意した多くの事項で交渉を後退させようとしたからだと主張した。中国のトランプ氏と習近平(シー・ジンピン)国家主席はいずれも自国民から強い指導者とみられるよう努力している。米中が包括的な合意に至るまでは、多くの項目が繰り返し検討し直される可能性がある。

米国の対米関税引き上げは、米国では中国から輸入する消費財の価格上昇を反映してインフレ圧力が強まる公算が大きい。世界経済の成長はすでに鈍化し始めており、さらなる減速を引き起こすだろう。

米中貿易交渉は最終的には合意に達すると考えている。問題は、それまでにどのくらいの時間がかかり、世界経済への損害がどの程度まで膨らむかだ。知的財産権の保護について双方の合意に強制力を持たせることは難しく、持続可能性にも疑いが残る。

(ニューヨーク=高橋そら)

「米、一段と圧力をかける可能性」

■米ピムコの公共政策調査責任者、リビー・キャントリル氏

ピムコのリビー・キャントリル公共政策調査責任者

ピムコのリビー・キャントリル公共政策調査責任者

今回の閣僚協議がうまくいかなければ、(貿易摩擦の)さらなる激化が予想される。トランプ米大統領は(今回の)関税引き上げだけでなく、追加的な制裁関税に踏み切る可能性も示唆している。

トランプ氏は交渉相手に対する影響力を高め、より良い合意を引き出すための手段として、関税が有効だと信じている。これらの脅しは真剣に受け止める必要があるということだ。実現すればリスク資産は急落し、長期的な経済への影響も出てくるだろう。

足元の強い経済や、健全な国内総生産(GDP)や労働市場がトランプ氏を勢いづけている。中国に対して強く出るとしたら、今が最適な時期だろう。(市場が崩れた場合に)どれだけ政権が痛みに耐えるかはわからない。だが、交渉の大詰め段階で、より良い合意内容を得るために圧力を強めることができるのなら、長期的な経済的利益のために短期的な市場の痛みは価値があると考える可能性もある。

(ニューヨーク=関根沙羅)

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