2019年6月27日(木)

ウーバー、リスク抱えての上場 失われた高揚感

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2019/5/10 15:32
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【シリコンバレー=白石武志】米ライドシェア最大手のウーバーテクノロジーズが10日(現地時間)、米ニューヨーク証券取引所に上場する。上場時の時価総額は約820億ドル(約9兆円)と米国で今年最大の新規株式公開(IPO)となる。一足先に上場したライバルの米リフトの株価低迷も重なり、公開価格は想定範囲の下限に近い水準となった。株式市場の高揚感は過去のものとなりつつある。

ウーバー株は10日から取引を開始=ロイター

米ライドシェア最大手ウーバーのIPOを控え、ニューヨーク市のドライバーたちが待遇改善などを求め抗議集会を開いた

大型IPOとして注目されるウーバーだが、目論見書で示した上場の目的はやや曖昧だ。同社は株式市場から調達する81億ドルの資金を「運転資金や営業費用、設備投資を含む一般的な企業活動のために使う」と説明する。

ウーバーは4月中旬、自動運転技術部門を分社化しソフトバンクグループ(SBG)やトヨタ自動車などから10億ドルの出資を受けると発表したばかり。2018年末の現金同等物は64億ドルもあり、資金調達が目的ならば上場にこだわる必要性は低い。

18年1月にウーバーに出資し、現在は16.3%を出資する筆頭株主のSBGはウーバーの早期の上場にこだわっていなかったとされる。古くからの株主であるベンチャーキャピタル(VC)などにイグジット(出口戦略)の機会を用意するという側面が強い。

ウーバーの成長性への疑問もある。タクシー業界の反発からライドシェアのサービスが認められていない国があるほか、米国ではリフトとの競合がある。さらにウーバー自身がコンプライアンス(法令順守)に問題を抱え、各国で訴訟を抱えているのが懸念材料だ。

「2016年の消費者データ漏洩問題などを含め、米国内外の政府機関から多数の調査を受けている」「インドネシアなどでの汚職捜査に関連して、刑事上の制裁を受ける可能性がある」――。目論見書で示したリスク要因からは直面している実態が明らかになった。

サービスを担う運転手の一部からは、雇用関係を認めるよう求める訴訟を世界中で起こされている。英国の雇用審判所は、現地で起きた訴訟の中で運転手は自営業者ではなく労働者であると認定し、仏最高裁も料理配達サービスの運転手はウーバーと「従属関係にある」と雇用関係を示唆する判断を示している。

上場でVCやダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)らストックオプションを持つ経営幹部ばかりが潤う状況に、運転手らは不満を強める。8日に米国内外の主要都市で開かれた運転手らの団体による抗議集会では、報酬の引き上げや待遇の改善を求める声が上がった。

ニューヨークの集会に参加したデビッド・アレクサスさん(30)はウーバーやリフトのサービスを掛け持ちして週に平均1000ドル程度を稼ぐが、「時間給に直すと最低賃金すれすれ」だという。ガソリン代などを差し引くと病気がちな妻と小さな2人の子供を養うことはできず、他のアルバイトも兼ねながら生計を立てている。

ウーバーやリフトはこうした批判を見越し、一部の優良な運転手には、株式などで一時的なボーナスを払う仕組みを用意した。3月下旬に上場したリフトは関連する費用として19年1~3月期決算に8億9400万ドルの費用を計上した。上場で約23億ドルの資金を株式市場から調達し、その3分の1に相当する報酬を運転手らに支払った計算だ。

経営陣と働き手との間の所得格差の問題は米国企業につきものだが、ウーバーのサービス基盤の上では世界で390万人が働き、政治的な影響力も大きい。20年の米大統領選で民主党の候補指名を争うバーニー・サンダース上院議員は8日、抗議集会を開いた運転手らに同調し「強欲は終わりだ」とツイッターに投稿した。

ウーバーの広報担当者は「運転手は我々のサービスの中心であり、彼ら抜きに成功はない」と話すが、ロサンゼルスに拠点を置く運転手の団体は「我々の権利を奪うことで労働者を食い物にしている」と批判する。

ウーバーは運転手との雇用関係を認めておらず、残業代や社会保障税などのコストを回避しているとの指摘もある。ウーバーも「運転手が従業員として分類された場合、当社の事業は悪影響を受ける」と認める。

各国が規制強化に動けば現在のビジネスモデルが維持できなくなる恐れもある。ライドシェア市場は世界的に拡大傾向が続くものの、ウーバーは逆風の中で多難な船出を迎える。

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