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米、対中関税引き上げ 市場の見方

日本時間の午後1時1分、米国が2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に課す制裁関税を、現在の10%から25%へと引き上げた。午前の取引で反発していた日経平均株価が午後に下げに転じるなど、金融市場は神経質な反応をみせている。今後の影響をどう読むのか。株式、為替、商品の各専門家に見通しを聞いた。

クレディ・スイス証券の松本聡一郎CIOジャパン

 妥協点探る動き、米国株は再び高値へ

仮に米中の通商摩擦が長期化すれば、両国経済への影響は避けられない。2020年の米大統領選を控えて米国経済の腰折れが懸念されると米民主党は格好の攻撃材料とする。中国の景気減速ペースも速まる。互いの内政事情を考慮すれば、両国のメンツが保たれるかたちで落としどころを探る可能性が高い。

世界の株式相場を冷やした政治リスクが後退すると、そのほかのプラス材料に投資家の意識が向かう。米国経済は好調だ。雇用情勢は強く、生産活動も復調している。米企業業績も堅調。米連邦準備理事会(FRB)が利上げを停止していることも投資家心理を支える。IT(情報技術)銘柄などが主導して米S&P500種株価指数は再び最高値更新を試すだろう。日本株では電子部品や機械など、世界景気の拡大の恩恵を受ける銘柄を再評価する動きが広がりそうだ。

第一生命経済研究所の桂畑誠治・主任エコノミスト

 実体経済の影響限定的、中国の報復内容が注目

米国の対中制裁関税引き上げが両国の経済に与える影響はかなり限定的だろう。米国の国内総生産(GDP)への影響はマイナス0.14%程度とみられる。今回の関税の引き上げ対象には消費財が多いため、中国は米国以外に輸出先を変更して影響を和らげることもできる。中国経済は減税や歳出拡大といった景気刺激策で支えられており、十分吸収できるのではないか。

米中協議が継続されれば、合意形成への期待感が継続し、株式相場が大きく崩れることはないと考えている。注目点は中国側の報復関税の内容だ。農作物や自動車への関税をさらに引き上げるなら、影響は大きくなり、米中交渉の継続自体が当面難しくなりうる。米国側は「第4弾」としてさらなる追加関税の発動も示唆しており、米中貿易摩擦は激化の一途をたどる可能性もある。

ファイブスター投信投資顧問の大木将充運用部長

 警戒感いったん緩和、景気敏感株に買い

日経平均株価は大型連休が明けて9日までに850円あまり下げた。今回の通商摩擦の当事国でない日本株の大幅安は、投資家が関税引き上げのマイナス影響を最大限織り込んだことを示唆している。実際に関税引き上げというイベントを通過したことで過度な警戒感はいったん和らぎ、むしろ「あく抜け感」が市場に広がるとみる。昨年の第1弾、第2弾の対中関税引き上げの後にも日本株は上昇していた。

今年初めからのグローバルな株高局面は、景気動向や金融政策の方向感で投資判断するマクロ系ファンドが主導した面があった。日本市場では異例の10連休もあったため、銘柄選別して投資するアクティブ投資家は十分に株買いに動けていない。売られていた景気敏感株や中小型株への株買い需要は潜在的に強そうだ。あく抜け感が出たことを起点として再び株高トレンド入りするとみる。日経平均が6月までに2万4000円を試す局面もあるとみている。

三菱UFJ銀行の内田稔チーフアナリスト

 目先は円独歩高、投資家の持ち高調整で

米国が早い時期に対中関税を再び10%に戻す可能性もあり、今後のトランプ氏の発言などを注視する必要がある。市場のリスク回避色は一定程度は残るだろうが、来週も投資家の持ち高調整に主導されて円は独歩高になりやすい。世界的な株安と長期金利の低下が続いており、円が上がりやすい状況だ。

米中摩擦が強まればさらに円高に振れ、協議継続なら様子見の展開になる。足元ではリスク回避の円買いが強く、ドル以外の通貨で円買いが進んでいる。ただ、資源国や新興国の通貨にはドルも一定の強さを維持している。円高は進むが、年初来高値と安値の中間値である1ドル=108円台半ばを突破するのは難しいだろう。

野村証券の大越龍文シニアエコノミスト

 需要減懸念、商品相場下押し

商品相場は当面、下押しされる。影響が大きいのは銅など非鉄相場だ。追加関税の対象となる家電などにも多く使われており、実需への影響は大きい。指標となるロンドン市場の銅先物は年初に付けた1トン6000ドルを意識する展開となるだろう。大豆を中心とした穀物にも下押し圧力が強まる。ただ非鉄も大豆も、すでに生産者にとっては採算割れギリギリの水準。下値は限定的となるはずだ。

原油も経済減速懸念から、来週初めにかけてニューヨーク先物が1バレル60ドルを割る可能性もある。その後は今後の石油輸出国機構(OPEC)の減産対応などに関心が移り、下げは一巡するだろう。

みずほ総合研究所の有田賢太郎・上席主任エコノミスト

 設備投資抑制、アジア全体の景気下押しも

米国が中国からの輸入品に追加関税を課せば日本から中国への輸出が減少し、日本企業が設備投資を抑制する可能性が出てくる。ただでさえ足元は設備投資を慎重に見極める動きが強まっていた。追加関税は中国だけでなくアジア全体の景気も下押する可能性もあり、そうなれば設備投資の先送りは一層顕在化するだろう。

日本から中国への輸出品は半導体製造装置など半導体関連が多い。日本の主要産業であり、輸出が鈍れば日本経済への影響は大きい。ただ、米中の交渉は継続の可能性も残っている。なんらかの妥結があれば株高・円安基調に戻り、企業の投資心理にもプラスだ。交渉の先行きは読みづらく、金融市場の投資家や企業はもうしばらくは様子見となるのではないか。

(竹内弘文、長谷川雄大、坂口幸裕、高倉万紀子、中村結)

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