園庭ない保育園「どうすれば…」 大津市の事故に動揺
大津市で保育園児の列に車が突っ込み、2人が死亡した8日の事故を受けて、各地の保育園で子供の散歩を一時中止したりコースを見直したりする動きが広がっている。都市部では園庭のない保育園が多く、子供を屋外で遊ばせるには公園まで徒歩で引率するしかない。「対策には限界がある」。関係者は安全確保に頭を悩ませる。

事故に遭った園児が通う「レイモンド淡海保育園」(大津市)の近くにある認可保育園は週内の外出をやめ、室内で過ごすことを決めた。園庭がないため積極的に園児を散歩に連れ出し、車道側に保育士らが立つなど安全に配慮してきたが、散歩ルートの1つが事故現場を通っていた。
散歩を再開する場合には職員がルートを再確認し、危険な場所があれば経路の見直しを検討する。園長は「子供たちは外遊びを楽しみにしている。安全が確認できた上で来週には再開できれば」と話した。
都市部では園庭を確保できない施設が多い。東京都港区のビル内にある保育園の30代の園長は「うちも園庭がないので人ごとではない」と深刻に受け止める。公園まで片道20分歩くこともあり、途中に大きな交差点もある。事故翌日の9日以降の散歩は自粛も考えたが、保育士にいつも以上に安全に留意するよう呼びかけ実施した。
東京都江戸川区の保育園の園長は「いつか自分たちにも起こるのではないか」と不安を感じる。保護者から散歩をやめないように求められたが、10日は2歳児以上の散歩を中止した。
厚生労働省の「保育所保育指針」は園庭がない保育園に公園など施設外での活動を勧めている。散歩もその一環で、指針は安全確保のため日常的に使う道路や公園の危険性を定期的にチェックし、結果を全職員で共有するよう求めている。
同省保育課の担当者は「今後どうすれば同様の事故を防げるのか、まだ答えは出せない」とため息をつく。
車が行き交う幹線道路沿いのビルにある保育園に1歳の長男を預けた東京都文京区の男性会社員(35)は「理想は園庭でのびのび遊んでほしいが都心では難しい。事故の心配がないわけではないが、祈るしかない」。同じ保育園に4歳と1歳の姉妹を預ける同区の女性会社員(31)も「子供は家に帰ると散歩のことを楽しそうに話す。先生は道路を歩くときは厳しく見てくれて信頼している」と話した。
事故現場となった大津市の歩道はガードレールが設置されていなかった。2012年4月に京都府亀岡市で登校中の小学生ら10人が死傷した事故を受け、文部科学省は全国の通学路を緊急点検。危険性が高い約7万4千カ所の9割以上で歩道整備やガードレール設置などの安全対策を施した。
しかし、大人の付き添いが前提の保育園や幼稚園の通園、散歩ルートは対象外で、安全点検は保育園などに任されている。滋賀県道路課の担当者は「歩道の幅が約4メートルと広く、縁石もあったためガードレールは設置していなかった。警察と連携してどうすれば園児らの安全を守れるか対策を検討したい」と話した。