アジア・オセアニア利下げの波 貿易戦争で景気警戒
フィリピン6年半ぶり

2019/5/9 21:46
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【マニラ=遠藤淳、香港=木原雄士】アジア・オセアニアの中央銀行が相次ぎ利下げに動いている。今月に入ってマレーシアとニュージーランドに続き、9日にフィリピンが約6年半ぶりの利下げを決めた。米連邦準備理事会(FRB)が1月に利上げ停止を宣言し、世界の中銀が緩和モードに転換しつつある。米中の貿易戦争で経済の先行き不透明感が強まるなか、金融緩和で景気刺激効果を狙う。

フィリピンは利下げによる金融緩和で景気浮揚を狙う(2018年5月、マニラ)=ロイター

フィリピン中央銀行は9日の金融政策委員会で、政策金利である翌日物借入金利を年4.75%から4.5%に引き下げると決めた。10日から適用する。2018年は5会合連続で計1.75%の利上げを決めるなどタカ派モードだった。一転して利下げにカジを切ったのは、景気が減速しているためだ。

同日発表の19年1~3月期の実質国内総生産(GDP)伸び率は前年同期比5.6%と、前の期の6.3%から減速した。市場予想(6.1%)も下回った。3月に就任したジョクノ中銀総裁は、直前までドゥテルテ政権で政府のインフラ開発を支える予算管理相を務めており、利下げで景気テコ入れをはかる意図が鮮明だ。

今月7日にはマレーシアが約3年ぶり、8日にはニュージーランドが2年半ぶりにそれぞれ利下げを決めた。先行きの利下げ観測も広がっている。オーストラリア準備銀行(中央銀行)のロウ総裁は7日の声明で「国際貿易の伸びが鈍り、多くの国で投資意欲も衰えている」と指摘した。AMPキャピタルのチーフエコノミスト、シェーン・オリバー氏は「6月にも利下げする」と見込む。インドネシアでも年内の利下げを予想する声が出ている。

アジア・オセアニアの各国が軒並み金融緩和モードに入ったのは、FRBが利上げを停止した影響も大きい。米国の利上げはドル高を通じてアジア通貨安を招きやすく、各国中銀は通貨防衛の利上げを迫られていた事情があるためだ。

フィリピンなどでは物価が安定し、利下げに動きやすくなった面もある。2月と4月に利下げしたインドは、総選挙を前に景気をテコ入れしたい政権の意向を反映しているとの指摘も出ていた。

足元では金融市場の不透明感が急速に高まっている。スイスの富裕層向け金融、ロンバー・オディエは米中の貿易協議が完全に決裂する可能性を15%と見込み、その場合、新興国資産が深刻な打撃を受けると指摘した。香港金融管理局の陳徳霖総裁は「市場は貿易協議を楽観視していた。資金流出につながる恐れがある」と身構える。

9日の外国為替市場ではインドネシアルピアが約4カ月ぶりの安値を付けるなど、アジア通貨安が再燃する兆しが出ている。経常赤字国のインドネシアやフィリピン、インドは利下げが資金流出につながりかねないジレンマを抱える。イラン情勢が一段と緊迫して、原油価格が上昇すれば、インフレ懸念が台頭する可能性もある。各国中銀は実体経済、金融市場、物価の3つをにらみながら、難しいかじ取りを迫られそうだ。

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