2019年8月25日(日)

火力発電岐路、迫る改革 三菱重工社長「再編も」

2019/5/9 19:30
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温暖化ガス排出量を減らす「脱炭素」の動きを受け、世界の重工業大手が火力発電事業の構造改革を迫られている。独シーメンスが同部門の切り離しを表明したのに続き、三菱重工業の泉沢清次社長は9日の決算発表記者会見で、中期では生産拠点の再編を迫られるとリストラを示唆した。対応速度が各社の競争力を左右する可能性がある。

三菱日立パワーシステムズの高砂工場(兵庫県)

三菱重工の火力事業は足元ではなお堅調だ。だが、泉沢社長は記者会見で「2021年以降、市場は厳しい」との見方を表明。「受注状況に合わせて生産規模を変え、グループの人員も再配置する」と述べた。

三菱重工は14年に火力部門を分離して日立製作所の同部門と統合。三菱日立パワーシステムズ(横浜市)を設立した。同社では採用抑制や他部門への配置転換により21年度以降に人員を30%減らす計画だ。国内外の工場再編にも取り組み固定費を削減する。

ただ、海外のライバルの動きは格段に早い。シーメンスは7日、ガス・電力部門を20年9月に分離して上場させる方針を発表した。発電機事業から事実上撤退する。ジョー・ケーザー社長は7日、「打つ手がなくなって初めて何が起きているのかを知る競合企業がある。当社は変化を予測して動く」と述べた。

ケーザー氏の念頭にあるとみられるのが、2年間でトップが2回も交代するなど迷走する米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。15年に仏アルストムから火力発電などのエネルギー部門を1兆2500億円で買収したが、その後事業環境が一気に悪化。減損処理損失約1兆7千億円を計上し、電力事業では1万人超を削減するリストラを打ち出した。

発電分野で脱炭素の動きは顕著に表れている。米調査会社マッコイ・パワー・レポートによると、火力発電向けガスタービンの需要は18年に前年比15%縮小した。15年に比べると半分の水準だ。

火力発電の中でも環境負荷が低い天然ガスを燃料に使うタイプは堅調で、厳しいのは石炭火力だ。各地で発電所建設計画のキャンセルが相次いでいる。三菱重工の火力事業の売上高は約6割を石炭火力向けが占める。

火力発電への逆風は今後も強まる見通しだ。風力など、温暖化ガスを出さない再生可能エネルギーによる発電が台頭しているためだ。企業の価値を計る尺度としてESG(環境・社会・ガバナンス)を重視し、化石燃料を扱う企業への投資撤退や取引を中止する「ダイベストメント」の動きが欧米の投資家を中心に広がっているのも大きい。

三菱重工は足元ではガス火力向けを中心に受注を確保する方針だ。シーメンスやGEの事業縮小による残存者利益を狙う。その間に体質強化を進める方針だが、「保守本流」である火力事業での大型リストラには社内に根強い反発があり、難航する可能性もある。リスク先送りにしない経営判断が求められる。

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