2019年6月26日(水)

業種問わず革新へ連携、越智三菱ケミHD社長 令和を読む

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
環境エネ・素材
2019/5/9 4:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

三菱ケミカルホールディングス(HD)の越智仁社長に新時代の戦略や化学産業の課題を聞いた。

――どうやって令和の時代を勝ち抜きますか。

インタビューに答える三菱ケミカルHDの越智仁社長

インタビューに答える三菱ケミカルHDの越智仁社長

「グローバル競争に勝ち抜くためには業種の垣根を越えた連携が欠かせない。各社が技術を抱え込むのではなく、それぞれが強い技術やノウハウを持ち寄ってインテグレート(統合)する必要性がさらに増してくる」

「M&A(合併・買収)にこだわらない。当社ではバイオ分野などを含む新興企業との連携を一段と進める。それが中国企業でも例外ではない。現状では研究開発投資の多くが自社内での研究に振り向けられているが、将来は全体の2割を企業間での開かれた共同研究に使いたい」

――中国企業の強みをどう見ますか。

「中国では地域や新興企業の中で技術革新を生み出すためのエコシステム(生態系)ができている。開発する製品のニーズにあわせた素材を提供できるメーカー、素材を部品に加工するメーカー、組み立てるメーカーが集まって柔軟に協業している。革新的な製品を生み出すスピードは日本の3倍にも感じるほどだ」

――令和はどんな時代になりそうですか。

「人工知能(AI)やビッグデータなどデジタル技術の導入で開発のスピード感が格段に上がるだろう。素材開発で蓄積した研究データをどう分析して生かし切るかが勝敗を分ける。AIを活用し素材の開発期間を短縮させる『マテリアルズ・インフォマティックス(MI)』と呼ばれる分野は欧米や中国が数年前から先行しているが、日本企業だってそんなに遅れていないし、追いつける」

「(時代を一言で表すと)平成が業界の構造改革に迫られた『改』の時代だとすると、令和は科学技術の飛躍を意味する『飛』の時代だ」

AIなどの先進技術を活用した素材開発が成長のカギ(三菱ケミカルHDのフラットパネルディスプレー用光学フィルム)

AIなどの先進技術を活用した素材開発が成長のカギ(三菱ケミカルHDのフラットパネルディスプレー用光学フィルム)

――日本が先を行く部分はありますか。

「地球温暖化対策やリサイクルへの意識の高さは(中国勢よりも)日本が先を行っている。化学分野でもそうした問題を視点に置いた取り組みでは勝機がある」

――平成の経験をどう令和に生かしていきますか。

「2008年のリーマン・ショック後、基礎化学品であるエチレンなどの国内設備の統廃合が加速した。当社ではポリエチレンなど汎用樹脂の小規模設備は廃棄して、カーボンファイバーや高機能の樹脂やフィルムといった高付加価値のニッチな川下の素材を強化した。同様の取り組みで化学企業全体の収益力が上がった。日本の最大の需要先である中国が高度成長から『新常態』と呼ばれる緩やかな成長路線に移っても利益が出る筋肉質な企業体質になった。ただ令和ではデジタル化の手を抜けばあっという間に置き去りにされてしまうだろう」

――国内に製造を残し続けられるでしょうか。

「国内の石化プラントは老朽化が進んでいるというが、こまめに更新している。1970年代に造った設備の8割が更新してあるし、配管なども修理されている。化学の製造現場では約10年後の30年がターニングポイントになるとみている。プラントの自動化が一段と進み、生産効率も従来の1.5倍程度まで高まるだろう。品質の振れを抑えるために熟練の技術者が必要だが、AIで製造工程を管理して設備稼働の不具合などの発生を未然に防ぐことができれば、品質を安定させることもできる。今後は緊急時に対応する人員だけに減らせる」

――開発力も課題です。

「データ分析にたけた人材をどれだけ集められるかがカギとなる。開発の現場だけでなく製造部門でも設備管理に蓄積したデータの活用が重要だ。開発や製造現場での人手が減る一方、マーケティングを含めて開発から生産までの効率的な流れを一貫してイメージして作り上げられる人材も求められる」

■再編・設備統廃合に課題
 日本化学工業協会によると、国内の業種別製造業で化学工業の2016年の出荷額は42兆1270億円と、自動車などの輸送用機械器具に次いで2位。自動車や家電、半導体関連に欠かせない高機能品の生産に活路を求めて成長を維持してきた。
 今後は次世代の高速通信規格「5G」や「CASE(つながる車、自動運転、シェアリング、電動化)」に対応した素材技術の開発を世界に先駆けて進めることが成長持続のカギとなる。
 そのためにも企業間のさらなる再編は避けられそうにない。国内の上場化学メーカーは200社超。米ダウ・デュポンの3分割や、独バイエルと米モンサントの統合のように、機能特化で開発力を高める海外大手との競争で存在感を示すためにも一定の規模を追求する必要がある。
 汎用品などの国内の生産体制の見直しも課題だ。好調な輸出を背景に、石油化学製品の基礎原料であるエチレンの生産設備の稼働率は3月まで8カ月連続で実質的なフル稼働を続けるが、世界景気の雲行きは怪しくなっている。
18年のエチレンの国内生産量はピークだった07年比で2割強減っている。しかし、世界需要が弱含み、需給の緩みが深刻になれば国内設備のさらなる削減も迫られるだろう。
(企業報道部 後藤宏光)

[日経産業新聞 5月1日付]

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