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読書の喜び 人を育てる 性格も積極的に

多忙な仕事に追われる毎日。小学1年生になった娘と接する時間は限られているため、なるべく短い時間でも捻出するように心がけている。その一つが就寝前の本の読み聞かせだ。幼少期に私が両親からしてもらえなかったこと。娘にはぜひ続けたいと思っている。

私は1960年代後半、高度経済成長期のまっただ中に群馬県赤城山麓の農家の長男として生まれた。両親は畑や田んぼ、養蚕と寝る間も惜しむように働きづめで、日々生きることに精いっぱい。とても私を構っている余裕などなかった。

そのため小学校入学時には自分の名前さえ書くことができず、早々にクラス一の劣等生のレッテルを貼られることになった。担任の教師には「お宅の息子さんの成績は下よ」とあきれられ、学歴をもたない両親はあわてたそうだ。

娘とすごす限られた時間を大切にしている

すると知人の一人だった教師から本に親しむことを勧められ、わらにもすがる思いで、自宅から2時間の子供文学を専門に扱う書店に私を連れて行き、好きな本を毎月10冊ずつ選ばせた。図書館で借りるのではなく購入すればより一層本への愛着がわくと聞き、助言を忠実に守ったらしい。

当時の父母にとって、この出費はばかにならなかっただろうと思う。が、それまで息子に何もしてやれなかったことへの罪滅ぼしの意味もあったようだ。

私はといえば、初めのうちは自分の本を得たことがうれしく、表紙を丹念に眺めたりなでたりしたが、文字は理解できずに母に読んでもらうしかなかった。それでも自分で読めるようになってくると徐々に本の魅力にとりつかれ、毎月買ってもらうのが楽しみになった。

本の中ではいろいろな登場人物に出会い、どんな状況でも前向きに生きる主人公に勇気づけられ、まだ見ぬ世界やワクワクする冒険がまるで自分自身の体験そのものに思えた。本の世界は常に夢と希望にあふれており、いじめられていた学校生活で沈みがちだった心を高揚させてくれた。

やがて国語力も身につき、少しずつ成績が伸びてきた。そればかりかさまざまなことへの興味が湧き、内向的だった性格も積極的、行動的になった。時には仲間と一緒に隣県まで自転車旅行に出かけたり、自分が中心となって野球チームを結成したりと、本は私を新しい境地へと導いてくれた。

先日、女性として初めて世界最高峰エベレストに登頂した田部井淳子さんの伝記を娘に読んで聞かせた。女性には登れないという偏見との戦い、隊の結成や費用捻出の苦労話はまだ幼い子には難しすぎるかと懸念したが、数日後には「田部井さんのように頑張る」と言い出して、エレベーターに乗らず、階段を利用した。きっと娘の心に何かしらの思いが芽生えたに違いない。

現代はインターネット環境が充実し、動画やゲームなど子どもにとって魅惑的なものが多々ある。しかし文字を通じて読解力を養いながら自分なりのイメージを無限に膨らませていく読書は、知能だけでなく創造力や好奇心を高めるために大きな意味がある。

社会が大きく変わりつつあるのは確かだが、読書から得るものはいつの時代になっても減じることはなさそうだ。

(プロトレイルランナー)

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