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豊島逸夫の金のつぶやき

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10日午後1時1分、日本市場にリスク

2019/5/8 9:46
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10連休前には「最終的には米中貿易協議は歩み寄る」と楽観論を織り込んでいた市場の景色が連休後の7日に激変した。交渉決裂の可能性を織り込み始めたのだ。リスクオンのポジションを巻き戻し、リスクオフ・モードに転換中だ。安全性を求めるマネーが円や金買いに動いている。

米国による中国製品への関税引き上げが世界景気を冷やすシナリオが懸念され、中国銘柄以外にも売りが拡大してきた。ダウ工業株30種平均も6日はかろうじて持ちこたえたが、7日には売りの第2波に見舞われた。一時648ドル安まで下げた後、473ドル安まで下げ幅を縮小して引けた。

典型的な短期投機筋の空中戦の様相だ。CTA(コモディティー・トレーディング・アドバイザー=商品投資顧問)などのアルゴリズム売買がテクニカル指標に反応している。ダウ平均は50日移動平均線を下に抜けた。原油先物も、景況感悪化による需要減が嫌気され、50日、200日移動平均線を下に抜けた。更に、予想変動率を示すVIX指数も警戒水域とされる20を突破する場面があった。VIX先物の期近が期先より高いバックワーデーションという現象が発生している。足元でリスクの切迫感が強まっていることを示す。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が「米国東部時間10日午前0時1分に25%への追加関税を発動」とトランプ大統領のツイートを再確認したことが効いている。中国の劉鶴副首相がワシントンに到着して通商協議で議論するのも実質的に9日だけということになる。

このような状況で、新債券王と呼ばれるガンドラック氏が「米中決裂の確率は50%以上。トランプ、習近平両氏は後に引けない」と語った後に、ダウ平均の下げ幅が600を超えた。

「It's not pretty.」日本語に訳すと「ヤバイ」という表現がヘッジファンドの間で飛び交う。

ワシントンの米議会も、対中国となると、共和党・民主党両議員の中から「安易な妥協は避けよ」と強硬意見が出始めた。トランプ政権内でも穏健派とされるムニューシン財務長官よりライトハイザー代表など強硬派が優勢とされる。大統領選をにらみ、株高を自らの功績と自画自賛するトランプ大統領も、今回ばかりは、短期的な株安を辞さずとの姿勢のようだ。

米国の産業界からは強い懸念の声もあがっている。中国に部品の生産拠点を持ち、米国で組み立てる米企業幹部からは「25%関税は壊滅的被害」「組み立て工程をメキシコに移す。それに伴い米国内の雇用が失われる」などの発言が聞かれる。

しかし、トランプ大統領は、支持率上昇、米国経済成長率3.2%、雇用統計で失業率約50年ぶりの3.6%などの数字を背景に、強気の構えだ。

筆者は、10日午前0時1分の「最終期限」が延長されるとみる。もし中国の株価と人民元が共振して急落すれば、世界株安が連鎖するリスクが強まり、さすがに、トランプ、習近平両氏も見過ごせまい。

とはいえ、ライトハイザー氏が「中国は約束違反」とまで語っているので、予断を許さないことはたしかだ。フェア(公正)ではない、との表現は特に米国人の心に響く。フェアプレーの精神を貫くために犠牲はいとわぬ、という心理に流れやすい国民性である。

なお、気になる円高だが、米国債も安全資産として買われ、ドル金利が下げ傾向なので、ドル安・円高に振れがちな市場環境が懸念される。

米国東部時間10日午前0時1分は日本時間10日午後1時1分。中国製品への追加関税引き上げが日本市場を直撃するリスクも意識せざるを得まい。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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