2019年5月25日(土)

民間ロケット成功の北海道大樹町、「宇宙のまち」へ

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北海道・東北
2019/5/7 20:00
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ロケット開発スタートアップのインターステラテクノロジズ(IST、北海道大樹町)が小型ロケット「MOMO(モモ)」3号機の打ち上げに成功した。地元大樹町では宇宙産業の誘致を35年前から進めてきた。三度目の正直となったISTの打ち上げ成功は、発射場を拡張する機運の高まりにつながりそうだ。

4日午前に打ち上げられたモモ3号機(インターステラテクノロジズ提供)

4日午前5時45分00秒、モモ3号機は発射台を離れ、轟音(ごうおん)とともに徐々に加速し、大樹町の空へと消えた。見学客からは歓声が上がったが、指令室のIST社員は気が気ではない。ロケットが宇宙空間に届かなければこれまでの努力も水泡に帰すだけに、その高度を固唾を飲んで見守った。

「97、98……やった!」。民間単独開発のロケットが宇宙空間とされる高度100キロメートルに届くのは日本初だ。モモは2017年の初号機、18年の2号機と打ち上げに失敗していた。インターネットを通じたクラウドファンディングで資金を集め、背水の陣で臨んだ3号機には開発者の意地が詰まっていた。

稲川貴大社長は「新たな宇宙開発の歴史を迎えることができた」と胸を張った。ただ今回搭載したのは衛星ではなく、重力などを測定するための実験機器にすぎない。宇宙航空研究開発機構(JAXA)頼みだった日本のロケットビジネスにようやく芽生えた民間主導の芽を大樹町に根付かせるのには、北海道の官民の力をこれまで以上に結集させることが必要だ。

ISTは2023年度にも人工衛星を載せられる2段ロケット「ZERO(ゼロ)」の打ち上げを予定している。今回打ち上げたモモ3号機の重さが約1トンなのに対し、開発中のゼロは燃料を含む重量が36トンに達する。このサイズのロケットを飛ばすには大樹町の現状の設備では不十分で、拡張した上で国の適合認定を受ける必要がある。

多額のコストや複雑な行政手続きが必要な発射場の整備や運営を誰が担うのか。ISTは整備費を集めるため、発射場の命名権を2年間5400万円で販売し始めた。地元では発射場の事業見通しを検討するため、大樹町や帯広市、帯広信用金庫などが企画会社の設立に向けて準備を進めている。

北海道も打ち上げ成功を受けて7日に十勝総合振興局に航空宇宙事業の相談室を立ち上げた。北海道でISTに部品を納入している企業はまだ7社にとどまる。道は道内企業がより多くの部品を納入できるよう、ISTも招いた関連企業向けの説明会を10日に開く。

大樹町の酒森正人町長は4日の打ち上げ後の記者会見で「ゼロを打ち上げられるよう発射場の整備を進める。北海道内外の企業と協力し、国の支援を得ていく」と前向きな姿勢を強調した。

とはいえ、莫大な費用がかかる発射場の整備を町が単独で進めるのは難しい。打ち上げ成功で地域の注目度が高まったこのタイミングだからこそ、町のリーダーシップで官民の力を最大限に発揮できる枠組みを早期に築き上げる必要がありそうだ。(山中博文)

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