2019年6月25日(火)

スー・チー氏、記者2人釈放で国際世論に歩み寄り

東南アジア
2019/5/7 18:25
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【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに対する迫害について取材していたロイター通信の記者2人が国家機密法違反の罪で収監されていた問題で、ミャンマー政府は7日、2人に大統領権限による恩赦を与え、釈放した。国際社会が報道の自由への弾圧だと非難するなか、現政権を率いるアウン・サン・スー・チー国家顧問が歩み寄りの姿勢をみせた格好だ。

釈放されたのはいずれもミャンマー人のワ・ロン記者(33)とチョー・ソウ・ウー記者(29)だ。2人はロヒンギャの10人が2017年9月にミャンマー西部ラカイン州で殺害された事件を取材していた。だが、同年12月、警察官から不法に機密書類を受け取ったとして逮捕された。

7日、ヤンゴンで、釈放後に笑顔をみせるワ・ロン記者(左)とチョー・ソウ・ウー記者=ロイター

7日、ヤンゴンで、釈放後に笑顔をみせるワ・ロン記者(左)とチョー・ソウ・ウー記者=ロイター

2人は一審、二審でいずれも禁錮7年の有罪判決を受けた。最高裁は4月、2人の上告を棄却し下級審の判断を支持した。2人は一貫して無罪を主張していた。

大統領府のゾー・テイ報道官は、恩赦の理由を「長期的な国益を考慮したうえでの判断だ」と説明した。2人の釈放は、毎年4月の仏教暦正月を祝う恩赦の一環という体裁を整えたが、判決確定後すぐの解放は異例だ。

スー・チー氏の政権が国際世論に譲歩したのは明らかだ。2人の記者を巡る問題はロヒンギャへの迫害とからみ、ミャンマーが国際社会から批判を受ける大きな要因となった。一部ではスー・チー氏に授与されたノーベル平和賞を剥奪すべきだとの声もあがっていた。

欧州連合(EU)は人権問題を理由にミャンマーに与えてきた特恵関税を剥奪する制裁を検討し始めた。外資誘致も鈍った。ミャンマーへの外国直接投資の認可額は15年度(15年4月~16年3月)をピークに18年度まで前年度を下回った。同年度は約36億ドルで15年度の3分の1程度に落ち込んだ。軍政から民政に移行したミャンマーだが、対外イメージは急落した。

2人の釈放についてEUは「報道の自由は民主化に欠かせない重要な柱だ」という歓迎の声明を出した。ロイター通信は、グテレス国連事務総長が「(釈放に)安堵している」と述べたという国連報道官のコメントを報じた。

ミャンマー治安部隊は17年8月、ラカイン州のロヒンギャが住む村を攻撃し、多数の難民が隣国バングラデシュに逃れた。これ以降、ミャンマー政府に対する国際社会の非難が強まった。ロヒンギャ難民は70万人を超え、ミャンマーへの帰還が進まない。同国政府はロヒンギャを「外国人」とみなし、帰還後の安全が保証されていないからだ。

京都大学東南アジア地域研究研究所の中西嘉宏准教授は「今回の恩赦で2人への司法判断が覆されたわけではない」と指摘する。ミャンマーの政治学者のヤン・ミョー・テイン氏は「政府や議会は表現の自由の保障に努めるべきだ」と語る。

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