マイクロソフト、開発者会議で見えた期待と懸念

2019/5/7 13:38
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【シアトル=佐藤浩実】米マイクロソフトの開発者会議が6日に始まった。繰り返し会話ができる音声アシスタントから「ワード」の文章の改善指南まで、クラウドと人工知能(AI)を組み合わせた技術を数多く紹介。あらゆるサービスをネット経由で提供する事業構造への変革が進むさまを見せつけた。時価総額の「1兆ドルクラブ」にも名を連ね、完全復活ムードが漂うが、会場では同社の懸念も垣間見えた。

マイクロソフトは開発者向けの年次会議を開いた(6日、シアトル)

マイクロソフトは開発者向けの年次会議を開いた(6日、シアトル)

サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は会議で「いわゆる『テック業界』の外でソフトウエア開発者が増え続けている」と話し、小売りや外食、自動車業界などでも使ってもらうことを念頭におく100近い新サービスや技術を発表した。提供時期は即日から未定までさまざまだが、いずれもマイクロソフトのクラウド基盤「アズール」が土台となる。

ナデラ氏がCEOに就任した2014年以降、マイクロソフトはサーバーから業務ソフトまであらゆる製品をクラウド経由のサービスとして提供するように改めてきた。顧客から継続的に収入を得るインフラが整い、直近の1~3月期決算は14%増収、19%増益といずれも2けたのプラス。4月25日にはアップル、アマゾン・ドット・コムに続いて米企業として3番目に時価総額を1兆ドルの大台に乗せた。

6日の発表では利益を生み出し始めた個々のクラウドサービスにAIを絡めて賢くし、さらにサービス同士を連携させるものが目立った。例えば、将来の職場の姿として協業アプリ「チームス」のビデオ会議に、AR(拡張現実)ゴーグルの「ホロレンズ」を付けて参加するデモなどを見せた。つかんだ顧客が離れないようにつなぎ留め、復活をさらに盤石なものにしようとしているように見える。

マイクロソフトの開発者向け年次会議で、ナデラCEOが技術戦略を語った(6日、シアトル)

マイクロソフトの開発者向け年次会議で、ナデラCEOが技術戦略を語った(6日、シアトル)

ただ、完全復活の持続性については見方がわかれる。

米IDCのデビッド・シュブメル氏は「大企業顧客の層が厚いマイクロソフトの競争力は当面揺るがない」と見る。18年のクラウド基盤の世界シェアはアマゾン・ドット・コムの32%に対し、マイクロソフトは17%と2位ではあるものの、17年と比べて約3ポイント差を縮めた。いまなお8億台ある「ウィンドウズ10」の搭載パソコンなどを通じた大企業とのパイプに加え、アマゾンやグーグルを共通の敵と見なす「トモダチ戦略」で小売りや自動車メーカーとの契約を増やしているためだ。

一方で、スマートフォンなどから撤退してクラウド主体の企業向けビジネスに振り切った反作用を懸念する声もある。米クリエイティブストラテジーズのアナリスト、キャロリーナ・ミラネシ氏は「消費者がマイクロソフトに直接触れる機会は少なくなった」という。数少ない接点であるゲーム事業には、グーグルやアップルが新サービスをひっさげて参入すると表明済み。これから競争が激しくなるのは必至で、うまく立ち回れなければ「『次の世代』の若者たちが知らない会社になるリスクはある」(ミラネシ氏)。

マイクロソフトは今年初めて、500人の学生エンジニアを開発者会議に招いた。ナデラ氏の講演の最後には世代を超えて人気が高い「マインクラフト」のARゲームの投入をにおわせる予告映像を流すなど、従来の会議の枠組みを超えて次の世代を意識した動きも見せた。誰もが認める復活を遂げた巨象。世間の視線が「その先」へと移りつつあることを最も感じ取っているのはマイクロソフト自身なのかもしれない。

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