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カネロ、ミドル級3団体統一 広告塔の役目は不十分
スポーツライター 杉浦大介

2019/5/6 6:30
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メキシコの英雄がミドル級の3団体を統一――。5月4日、米ネバダ州ラスベガスのTモバイルアリーナで行われた世界ボクシング協会(WBA)、世界ボクシング評議会(WBC)、国際ボクシング連盟(IBF)世界ミドル級タイトルマッチで、WBA、WBC王者のサウル・"カネロ"・アルバレス(メキシコ)がIBF王者のダニエル・ジェイコブス(米国)に3-0(115-113が2人、116-112が1人)の判定勝ちを飾った。

4日のタイトルマッチでカネロ・アルバレス(左)はダニエル・ジェイコブスに勝ち、ミドル級の3団体統一を果たした=AP

4日のタイトルマッチでカネロ・アルバレス(左)はダニエル・ジェイコブスに勝ち、ミドル級の3団体統一を果たした=AP

51勝(35KO)1敗2分けのアルバレス、35勝(29KO)2敗のジェイコブスという高いKO率を誇る選手同士の対戦は、互いの強打を警戒しての技術戦となった。激しく打ち合う場面が少ない中、フルラウンドを通じてより有効打が多かったのは、今まさに全盛期にいるメキシコ選手の方。ジェイコブスのパンチを巧みにかわし、多彩な左パンチでポイントを集めていった。

ファイトマネーは3500万ドル

「(ジェイコブスは)難しい相手だとわかっていたが、想定通りに正しい方法でやり遂げた。自分の仕事をやったんだ」

2018年9月にそれまで無敗だったゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)に初黒星をつけたアルバレスは、その後にスポーツ動画配信サービスのDAZN(ダゾーン)と11試合で3億6500万ドル(約400億円)の契約を結んだ。ジェイコブス戦を制してミドル級の主要4団体制覇に近づくとともに、DAZNで全米に生配信された大舞台で3500万ドルものファイトマネーを受け取った。

しかし、今回の試合では大アリーナに集まった2万203人のファンを喜ばせる山場はほとんどなく、終盤にはブーイングも飛んでいた。そんな試合内容は生配信したDAZNの社内上層部を興奮させるものではなかったかもしれない。

ボクシング中継は新時代を迎えている。これまでビッグファイトはその1試合を見るために60~100ドルが必要なテレビの視聴課金システム(PPV)に支えられてきたが、この2年の間にESPN+、DAZNといった動画ストリーミングサービスが台頭。特にDAZNは豊富な資金にものをいわせ、アルバレス、ゴロフキンといった大物と次々と契約してきた。日本の井上尚弥(大橋)も参戦しているワールド・ボクシング・スーパーシリーズ(WBSS)の放映権も獲得し、他にも総合格闘技、米大リーグのハイライト番組を放送するなど、短期間で豊富なコンテンツをそろえつつある。

今後はマッチメークに注目も

「DAZNのような動画配信サービスのおかげでPPVはもう不要になった」

アルバレスのプロモーターを務めるオスカー・デラホーヤ氏がそう述べるように、これだけの番組を月額19.99ドルで視聴可能というのは魅力的ではある。ただ、この価格でアルバレス、ゴロフキンといった契約選手のファイトマネーを賄おうと思えば、多数の加入者が必要。PPVのように一戦ごとの魅力で売るのではなく、加入者を定着させて巨額にしなければならないのだ。

試合はアルバレスの判定勝ち。終盤にブーイングも飛ぶ凡戦だった=AP

試合はアルバレスの判定勝ち。終盤にブーイングも飛ぶ凡戦だった=AP

ある関係者によると、昨年12月にアルバレスがロッキー・フィールディング(英国)と行った試合でのDAZNの視聴件数は20万~30万件にすぎなかったという。現在の加入者数は公表されていないが、当面の目標は100万件突破。今回のカネロ戦を皮切りに、5月18日のWBSS準決勝、6月1日のアンソニー・ジョシュア(英国)の世界ヘビー級タイトル戦、6月8日のゴロフキンの復帰戦とビッグファイトシリーズを用意し、加入者を一気に増やそうという局側のもくろみが見て取れる。

そんなプランを考えると、「最大の広告塔」であるはずのアルバレスが凡戦を勝ち抜いたこの日の一戦は好スタートとはいえなかった。

この結果を受け、気になるのは今後の方向性。アルバレス対ジェイコブス戦の後、過去2戦は激闘になったアルバレスとゴロフキンの3度目の対決を待望する声がリングサイドで早くも大きくなっていた。新たなビジネスモデルを前に進めるべく、スター選手たちの試合内容だけでなく、しばらくはマッチメークにもこれまで以上の注目が集まりそうだ。

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