中国に「借り手」卒業促す、融資拡大警戒 アジア開銀

2019/5/4 21:00
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【ナンディ(フィジー)=小太刀久雄】中国が進める新興国への融資拡大に対し、各国が警戒を強めている。アジア開発銀行(ADB)は中国向けの貸出金利を引き上げる検討を始め、日本は中国にADBからの借り入れを減らすよう要請した。6月に日本で開く20カ国・地域(G20)財務相会議でも議論を続ける方針だ。

麻生財務相は中国に借入削減を要請した

麻生財務相は中国に借入削減を要請した

麻生太郎財務相は4日、フィジーで開かれたADBの総会で、「(ADBの)所得基準に達した国々は(借り手からの)卒業への具体的な道筋を議論していくべきだ」と述べた。念頭に置いているのは中国だ。麻生氏は2日に中国の劉昆財政相と会談した際にも直接、伝えたという。

ADBが低い金利で優遇して融資する基準は国民所得で1人あたり6795ドルだ。中国は1万6800ドルとすでに基準の2.5倍に達している。低所得国などを支援するADBの趣旨から外れているが、ADBの中国向け融資の契約は2018年に約26億ドルと全体の12%を占めた。

ADBは68の国・地域で構成し、運営方針などを決める投票権比率は日米がそれぞれ12.8%でもっとも大きい。今回の総会では、米国も経済成長が進んだ国への融資の見直しを要望した。ADBはまず金利を引き上げる議論を始めた。

中国向け融資ではすでに世界銀行が金利の引き上げを決めた。対中強硬派で知られる米国のマルパス元財務次官のトップ就任が背景にあるが、ADBも「方向性は世銀の対応と同じだ」(中尾武彦総裁)という。

中国は広域経済圏構想「一帯一路」を掲げ、新興国への融資を拡大している。2016年に立ち上がったアジアインフラ投資銀行(AIIB)も主導し、アジアやアフリカのインフラ事業などへの融資で存在感を高めつつある。

ただ中国の融資先ではトラブルも起きた。例えばスリランカは多額の返済に行き詰まって港の運営権を中国に譲渡した。「資金が必要な国は多いが、持続可能性も重要だ」(インドネシアのスリ・ムルヤニ財務相)といった声があがる。

中国は過剰な貸し付けをしているとの批判に対し「意図的に積み上げたわけではない」と各国に説明する。今回の総会で中国の代表は「ADBは中・高所得国とも関係を強化すべきだ」と述べ、融資の削減や金利引き上げで早急に結論を出さないようクギを刺した。

中国はADBからの借り入れを減らしても、発言力の拡大を求める可能性がある。中国のADBでの投票権比率は日米に次ぐ3位の5.4%だ。増資の際などに比率を高めれば、ADBが融資先を選ぶ際に中国の意向がより強く反映され、過剰融資の問題が解消されない可能性が残る。

麻生氏はADB総会で、世銀や国際通貨基金(IMF)と連携してアジア各国がどこからいくらお金を借りているかを明確にすることも求めた。6月に日本で開くG20財務相会議では、「債務の持続可能性」を巡る問題の解決策を見いだせるかも焦点の一つになる。

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