2019年6月27日(木)

国主導の開発から民間へ ホリエモンロケット発射成功

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北海道・東北
2019/5/4 13:23
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ロケット開発スタートアップのインターステラテクノロジズ(IST、北海道大樹町)は4日、小型の観測ロケット「MOMO(モモ)」3号機の打ち上げに成功した。日本で民間企業が単独開発したロケットが宇宙空間に達するのは初めて。これまで国主導で進めていた日本のロケット開発に風穴を開けた。

ISTは同日午前5時45分に北海道大樹町の発射場からロケットを打ち上げた。4分後に最高高度113キロメートルの宇宙空間に届き、計画通り太平洋沖に落下した。ロケットの全長は10メートルで、重さは約1トン。重力などを測定する20キロの実験機器を載せているが、ロケットとしては小ぶりな部類だ。衛星を搭載して軌道に投入する能力はない。

同社は堀江貴文氏らが出資して2013年に設立した。20人ほどの少人数でロケット開発を進めてきた。17年にモモ初号機、18年には同2号機を打ち上げたが、宇宙空間には達しなかった。背水の陣で臨んだ3回目で成功し、同社の稲川貴大社長は「新たな宇宙開発の歴史を迎えることができた」と誇らしげだった。堀江氏はツイッターで「宇宙は遠かったけど、なんとか到達しました。高度約113km」と投稿した。

日本のロケット開発はこれまで宇宙航空研究開発機構(JAXA)が主導してきた。ISTが独自開発したロケットが宇宙空間に到達したことで、日本でも民間企業によるロケットビジネスの扉が開かれた。打ち上げ後の記者会見で堀江氏は「宇宙空間で紙飛行機を飛ばすような面白い、くだらないことに使われてこそ宇宙産業のマーケットは大きくなると期待している」と語った。

ISTの特長はロケットを打ち上げるコストの低さだ。ロケットは万全を期すために特注品を使うことが一般的で、1回の発射につき少なくとも数十億円の費用がかかる。ISTは限られた開発資金を有効活用するため、ホームセンターで材料を買いそろえたり、自社工場で材料を加工したりして価格を抑えた。

ISTの成功で民主導のロケットビジネスが日本でも産声をあげたが、世界では米中勢が先行している。米ロケットラボは18年に商用打ち上げに成功し、小型ロケットに200キロ程度の衛星を搭載できる。中国でも重慶零壱空間航天科技が小型ロケットの試験発射に成功した。

世界で小型ロケットの開発を競う背景には超小型衛星の打ち上げ需要が高まっていることがあげられる。民生品を取り入れた安く小さい衛星を使って、宇宙からリアルタイムで交通混雑や農作物の育ち具合、災害状況が把握することが期待される。米調査会社のスペースワークスによると、重さ50キログラム以下の超小型衛星の打ち上げ需要は23年に513基と16年の5倍以上に増える。

 打ち上げられる小型ロケットMOMO3号機=4日午前、北海道大樹町(インターステラテクノロジズ提供)=共同

打ち上げられる小型ロケットMOMO3号機=4日午前、北海道大樹町(インターステラテクノロジズ提供)=共同

ISTは今後打ち上げ需要を取り込み、商用ベースにできるかが焦点となる。同社はモモと並行して100キロ以下の小型衛星を載せる全長22メートルの2段ロケット「ゼロ」の開発を進めている。既にモモの5倍ほどの推力が得られる6トン級のロケットエンジンの燃焼実験に成功した。

開発のほかに資金調達も課題だ。これまでネットで小口資金を集めるクラウドファンディングなどから開発費用を賄ってきたが、ゼロの開発では数十億円の資金が必要になる。23年の商用化を目指し、業務提携している丸紅と海外顧客を開拓していく。

ISTは宇宙空間に到達する大きな一歩を刻んだ一方、衛星打ち上げの商用化に向けた道のりはまだ長い。堀江氏は失敗した前回の打ち上げで「開発段階に襲う死の谷を越えるのが想像以上に難しい」と振り返っていた。今回の発射成功で「ひとまず谷の乗り越え方はわかった」と自信ありげだ。成功をテコに投資や協力企業を集め、先行する米中勢との差を埋められるかが、この先問われる。(山中博文、山田遼太郎)

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