2019年6月20日(木)

トランプ氏、FRB人事再考へ 側近2人の起用断念

トランプ政権
経済
北米
2019/5/3 4:53
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領は2日、米連邦準備理事会(FRB)理事への起用を検討した経済評論家のスティーブン・ムーア氏が、指名を辞退したと発表した。ムーア氏は大統領選でトランプ陣営を支えた側近の一人で、トランプ氏に同調して利上げにも強く反対していた。トランプ氏は自身に近い元実業家の理事起用も断念したばかりで、FRB人事は再考が求められる。

FRB理事への指名を辞退した経済評論家のスティーブン・ムーア氏=AP

トランプ氏が起用を断念した元実業家のハーマン・ケイン氏=ロイター

トランプ氏は2日、ツイッターで「経済成長を重視するエコノミストで、素晴らしい人物であるムーア氏が指名辞退を決めた」と明らかにした。ムーア氏は保守系の経済評論家だが、多額の税金未納が報じられたほか過去の女性蔑視発言なども問題視され、人事の承認権を持つ上院が資質を問題視していた。

ムーア氏の起用はトランプ氏が3月下旬に表明していた。ムーア氏は16年の大統領選時にトランプ陣営の経済政策顧問を務め、巨額減税を立案した側近の一人だ。FRBが2018年12月に利上げに踏み切った際に強い反対論を唱えたことでも知られる。トランプ氏は1%の利下げを要求し始めており、FRBに側近を送って金融政策への介入を強める狙いだった。

トランプ氏は4月22日にも、自らに近い元実業家であるハーマン・ケイン氏をFRB理事に起用する人事案も断念したばかりだ。ケイン氏もトランプ氏に同調して利上げに反対していたが、過去のセクハラ疑惑や不倫疑惑が蒸し返され、上院の承認が難しくなった。

上院は100議席のうち与党・共和党が過半数の53議席を占める。与党全体の同意を得れば人事案は通過するはずだが、共和党内からも反対論が出たのは、ムーア氏やケイン氏の資質だけでなく「トランプ氏のFRB人事は政治色が強すぎる」(ミット・ロムニー上院議員)ことがある。

政治からの独立が求められるFRBの理事の任期は14年と大統領職(2期8年)よりも長く、歴代大統領は党派のバランスをとりながら人選してきた。オバマ大統領(当時)が12年に共和党系のパウエル現議長を理事に指名した例が典型だ。

トランプ氏の人事案には経済学界からも異論が上がっていた。共和党の議会指導部に近いグレゴリー・マンキュー米ハーバード大教授は「ムーア氏には知的な威厳がなく、上院は承認すべきではない」と手厳しく批判。人事を検討する上院に強く影響を与えた。

FRBは正副議長を含めて理事ポストが7席あるが2つは空席のままだ。トランプ氏は人事案の仕切り直しが求められるが、側近ら政治色の強い人選を続ければ、再び上院の承認が壁になる可能性がある。

ただ、FRBにとっては、トランプ氏が異例の人事案を公表するだけでも強い圧力となる。市場では「パウエル議長の後任はトランプ氏側近のクドロー国家経済会議(NEC)委員長になるのでは」(主要中銀の元首脳)との見方まで浮上。政治からの独立は揺さぶられ続けている。

パウエル議長は1日の記者会見で早期の利下げを否定したが、なお先物市場は5割の確率で「FRBは年内に利下げに転じる」と予測する。トランプ氏の利下げ圧力は金融資本市場に確実に効果をもたらしている。

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