2019年8月23日(金)

新興国危機、ドル供給を強化 ASEANと日中韓が安全網

2019/5/2 18:30 (2019/5/2 21:25更新)
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【ナンディ(フィジー)=小太刀久雄、中野貴司】日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は2日に財務相・中央銀行総裁会議を開き、新興国の金融危機に備えた通貨交換の枠組みを強化することで合意した。資本の流出が起きた国に期間を定めず米ドルを供給するほか、円や人民元も交換対象とすることを目指す。世界的な金融緩和で投機的なマネーが膨らむ中、新興国発の不安をおさえる狙いがある。

 日中韓と東南アジア諸国連合の財務相・中央銀行総裁会議に臨む麻生財務相(右)と黒田日銀総裁=2日、フィジー・ナンディ(共同)

「チェンマイ・イニシアチブ」と呼ぶ通貨協定を強化する。この枠組みは1997年のアジア通貨危機を経て、2000年にタイのチェンマイで開いた日中韓とASEANの財務相会議で創設した。

協定に参加する国は外貨準備を融通する。通貨安で資本流出の恐れがある新興国が自国通貨をドルと交換し、通貨安に備える仕組みだ。「満期1年ごとの契約期間を2回まで更新できる」としていた契約書を改め、発動から最大3年間だった交換の期限を撤廃する。

協定に基づく通貨交換が実際に発動したことはない。だが、日本政府の同行筋は「保険として機能することが重要」と語る。97年にタイで起きた通貨急落は、シンガポールやマレーシアとの協調介入もしていたが、タイ政府は外貨準備を使い切り、通貨を防衛できなかった。チェンマイ・イニシアチブは14年の改定で総額を従来の2倍の2400億ドル(約26兆円)に拡大している。

2日の会議後に発表された共同声明は「現地通貨を使うことが一つの選択肢となる」とも明記し、円や人民元の融通も検討することになった。麻生太郎財務相は記者会見で「支援を受ける国がほしい通貨を選べるのが重要」と述べ、前向きに検討する考えを示した。

自国通貨の国際化をめざす中国も意欲は強い。中国人民銀行の陳雨露副総裁も記者会見で「現地通貨の導入は象徴的な意義があり、1つの通貨に依存するリスクを分散できる」と語った。

対ドルでの為替リスクを軽減しつつ、他通貨の存在感を高めたいという意識は東南アジア諸国にもある。今回、中国と共に議長国を務めたタイや、大国意識が強いインドネシアもアジア通貨の利用促進を主張してきた。

日本政府関係者は「アジアの通貨がチェンマイ・イニシアチブの対象に加わることになれば、必ず円が人民元より先行する」と強調する。通貨を選定する具体的な検討が進めば、交換性に優れる円の採用が優先されると読む。逆に中国が人民元の採用を目指せば、為替市場の自由化などを迫られ、中国政府はジレンマに陥るとみる。

共同声明は「あらゆる形式の保護主義に対抗する」とも明記した。米国を含む20カ国・地域(G20)による18年12月の首脳会議では共同声明に「保護主義と闘う」との文言を盛り込めなかった。アジアのみの枠組みである今回の会議では「ルールに基づく多角的な貿易体制」と「開かれた地域主義」を支持することも共同声明に盛り込んだ。

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