2019年6月17日(月)

米特別検察官、司法長官と亀裂鮮明
トランプ氏の幕引き戦略に影

トランプ政権
北米
2019/5/2 15:39
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【ワシントン=中村亮】2016年の米大統領選でロシアが介入した疑惑の捜査を仕切ったモラー特別検察官と捜査結果を精査したバー司法長官の亀裂が鮮明になっている。バー氏が3月に公開した捜査結果の概要について、モラー氏が「重要な側面で誤解を生んでいる」と批判していたことが1日判明した。バー氏は同日の米議会上院の公聴会でトランプ大統領を擁護する発言を繰り返し、野党・民主党から中立性に欠けるとして辞任を求める声が相次いだ。

1日、米議会上院の司法委員会の公聴会に出席したバー司法長官=AP

「文脈や本質、中身を完全にとらえていない」。モラー氏は3月27日付の書簡で捜査結果に関するバー氏の説明に懸念を示した。「捜査結果に関する米国民の信頼確保の土台が揺らぐ」と厳しい言葉を並べた。バー氏は直前に448ページに及ぶ捜査報告書のうち、「主要な結論」を盛り込んだ4ページの文書を公開していた。

モラー氏は、トランプ氏がロシア疑惑の捜査を妨げた疑いについて刑事責任を問うべきか判断を避けつつ「無実を証明しない」と説明した。一方、バー氏は4ページの文書で「証拠不十分」として推定無罪との考えを示した。この直後にトランプ氏は「完全な無実が証明された」と宣言した。モラー氏は自身の見解が正確に伝わっていないとの懸念を強めたとみられる。

バー氏の捜査結果の扱いに関して、モラー氏の考えが明らかになるのは初めて。政治から独立した立場のモラー氏の不満は「トランプ氏はシロ」との認識が広がりつつあった米世論に影響を与える可能性がある。トランプ氏はロシア疑惑の幕引きを急いでいるがその戦略が狂うリスクになる。

一方、バー氏は1日の公聴会で捜査結果の説明は適切だと強調した。4ページの文書は「結論をありのままに示した」と訴えた。「モラー氏は文書が不正確とは言っていない」と指摘した上で「(捜査結果に関する)メディア報道が不正確だと懸念していた」と主張した。モラー氏は書簡でメディアに不満を示していないが、バー氏は双方に見解の隔たりはなかったとアピールした。

モラー氏が電話で自作の報告書のうち捜査結果の要約を早期に公開すべきだとバー氏に要求していたことも明らかになった。だがバー氏は「断片的な公開に関心はない」と拒否した。バー氏は公聴会でモラー氏の書簡を「少し無礼だった」と評した。真意を伝えられないと焦るモラー氏の懸念を軽んじていた公算が大きい。

バー氏は1日も「トランプ氏は誤って非難された」と指摘し、疑惑捜査の被害者だと擁護した。捜査妨害の疑いでは、トランプ氏は側近を通じてモラー氏の解任を画策していたが、バー氏は代わりの特別検察官を任命する可能性があり、トランプ氏が捜査の打ち切りを意図したとは言い切れないと指摘した。モラー氏は報告書で「捜査介入の意図を示す証拠が多数ある」と結論づけていた。

野党・民主党はトランプ氏寄りのバー氏に反発を強めた。20年の大統領選に名乗りを上げたカマラ・ハリスやエリザベス・ウォーレン、キルステン・ジルブランド各上院議員は1日、一斉に辞任を要求した。ペロシ下院議長も「司法長官に求められる資質を満たしていない」と厳しく非難した。5月中にモラー氏を公聴会に招致し、捜査結果を巡る真相解明を目指す。

トランプ政権は民主党の対応を批判した。サンダース大統領報道官はツイッターで「民主党はすばらしい公人に対して根拠のない攻撃をして自らをおとしめている」と断じた。バー氏は民主党が多数派を占める下院で2日に予定していた公聴会を欠席する方針を決めた。民主党の反発を買うのは必至で対立が収束する兆しはない。

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