米、巨額インフラ計画始動 2兆ドルに増額

2019/5/1 18:37
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【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領と野党・民主党指導部は4月30日、2兆ドル(約220兆円)のインフラ投資法案を検討すると決めた。トランプ氏の弾劾論がくすぶる中の電撃合意は、2020年の選挙を前に経済政策で成果を得たい両者の思惑が一致したためだ。ただ、財政悪化を懸念する共和党には反対論も強く、大型減税に次ぐ巨額財政計画は「空手形」に終わる可能性もある。

「もう少し小さな投資額を議論していたが、トランプ氏が2兆ドルへの引き上げを主張した」。30日、ホワイトハウスで協議した民主党のシューマー上院院内総務はそう明らかにした。

トランプ氏は16年の大統領選時、10年間で1兆ドルというインフラ投資計画を公約に掲げていた。18年の一般教書演説では規模を1.5兆ドルに増やし、今回はさらに2兆ドルに積み増して「大規模で大胆なものになった」(民主のペロシ下院議長)。

ただ、インフラ計画の投資規模だけは膨らむものの、中身の議論は全くなされていない。トランプ政権の予算教書では、連邦政府のインフラ投資への拠出額は10年間で2000億ドルだけだ。連邦政府がインフラ事業の2割を補助金として拠出し、8割は地方州政府や民間が負担するプランを描いている。トランプ政権は許認可の迅速化なども打ち出すものの「他人任せ」なのは否めない。

米経済にとってインフラ整備は待ったなしだ。米議会予算局(CBO)によると、米国の交通・水道への公的支出額は国・地方合わせて年4400億ドル。03年をピークに8%も減少し、全米土木学会はインフラ投資の不足額が13年から20年までに1.6兆ドルに達したと分析する。都市部は慢性的な渋滞が発生し、時間や燃料のムダによる損失が年1600億ドルにのぼるとの試算もある。

ロシア疑惑を巡るモラー特別検察官の報告書はトランプ氏の罪を問わず、20年の選挙を前に民主党は戦略の練り直しが求められる。ペロシ氏はトランプ氏の弾劾に慎重で「インフラ投資と薬価引き下げで政権と協力できる」と主張。景気の下振れが懸念される中で、民主党も経済政策で成果を得る道を探り始めた。

くしくもオカシオコルテス下院議員ら党内の急進左派からは、米連邦準備理事会(FRB)の資金拠出を当て込んで再生エネルギーに巨額投資する実験的な「グリーン・ニューディール」政策まで浮上。穏健派や主流派には「責任政党」として与野党で協調できる現実的なインフラ政策を求める声が強まっていた。

もっとも、与党・共和党は30日の協議に加わらなかった。大型減税によって米連邦政府の財政赤字は年1兆ドルに近づき、「小さな政府」を党是とする共和党には放漫財政への強い懸念がある。ホワイトハウスには1993年以来、据え置かれている連邦ガソリン税を引き上げて財源にする案があるが、共和党は選挙前の増税に強く反対する。

トランプ氏と民主党の議会指導部は、財源や使途を巡って3週間以内に再協議すると決めた。民主党は財源として企業や富裕層への増税を要求しており、トランプ氏と相いれない。具体案の議論に入れば入るほど、与野党の対立が表面化しそうだ。

米連邦政府は借入限度額を定めた「債務上限」が3月に復活し、議会はその上限の引き上げ議論も欠かせない。市場は財政審議は簡単には進展しないと冷静にみており、30日のダウ工業株30種平均は前日比で38ドルの上昇にとどまった。

トランプ氏は30日、2兆ドルの投資を、交通や水道だけでなく通信インフラにも振り向けるべきだと主張した。高速通信網「5G」で中国などに出遅れているとの懸念を持つからだ。ただ、インフラ計画で与野党の駆け引きばかりが先行すれば、米国の競争力を巡る本質的な議論はかき消されかねない。

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