1~3月期減収減益も「アップルショック」払拭
【シリコンバレー=白石武志】米アップルの業績が最悪期を抜け出しつつある。4月30日発表した2019年1~3月期決算は2四半期連続で減収減益となったものの、アナリスト向けの電話会見では、不振の引き金となった中国事業が回復基調にあると繰り返し示された。次の収益源と位置付けるアプリ配信などサービス部門も伸びた。

17年ぶりに業績予想を下方修正し、取引関係にあるサプライヤーの株価だけでなく、世界の為替市場まで揺らした1月2日の「アップルショック」から約4カ月。30日、電話会見に参加したティム・クック最高経営責任者(CEO)は「アップルの大きな強みは柔軟性と適応性、創造性に富む文化だ」と述べ、業績が最悪期から抜け出しつつあると強調した。

不振の震源地となった中華圏の19年1~3月期の売上高は前年同期比22%減で2四半期連続で2ケタ減となった。ただ、為替の実態に合わせて端末価格を見直したり、古い端末の買い取りサービスを拡充したりしたことにより、落ち込み幅は18年10~12月期の27%減に比べて5ポイント改善した。
中国政府は景気刺激策の一環として、4月から製造業の増値税(付加価値税)を16%から13%に引き下げた。さらに米中貿易交渉が進みつつあることも「消費者心理に前向きに働いている」(クックCEO)という。
決算発表でもう一つアナリストらが注目したのは、アップル・ミュージックやアプリ配信などサービス部門の成長力だ。売上高は16%増の114億5000万ドルと、市場予想(113億ドル前後)を上回った。さらに粗利益ベースでは全体の約3分の1を稼ぎ出した。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によれば米国でアップル・ミュージックの会員数がスウェーデンのスポティファイを抜いたという。
「我々のサービス部門の強力な推進力になる」。クック氏が期待する定額課金型サービスの加入者数は、1年前から1億2000万人増えて3億9000万人に達した。スマートフォン(スマホ)「iPhone」は世界で9億台超が稼働中とされ、基本ソフト(OS)を握るアップルの強みが再確認された。
19年秋には定額制の動画配信「アップルTV+(プラス)」やゲーム配信「アップルアーケード」などの新サービスを米国内外で始める。クレジットカード事業への参入も明らかにし、サービス企業への方向転換が一段と進むとられる。
米調査会社のベアード・エクイティ・リサーチは18年に15.9%だったサービス部門の売上高比率は20年に21.7%まで高まると予測している。
iPhoneの周辺機器として腕時計型端末「アップルウオッチ」などの販売も好調で、アップルは19年4~6月期の業績予想で売上高が525億~545億ドルになるとの見通しを示した。下限でもアナリスト予想(521億ドル)を上回る。
定額制の動画配信市場への参入計画が好感され、アップル株は1月に付けた直近の安値から約4割上昇した。業績の底打ち感が確認され、30日の時間外取引では一時5%高を付けた。
ただサービスもiPhoneという基盤があってこそだ。
韓国や台湾勢は5G対応の次世代スマホを今年中に投入する計画だ。一方、クック氏は30日の電話会見ではiPhoneの5G対応時期に関する質問には答えなかった。
4月半ばには、米半導体大手クアルコムとの知的財産をめぐる訴訟で和解し、同社から次世代通信規格「5G」向け通信半導体の供給を受けることでも合意した。巻き返す準備は整いつつある。
ただ次世代通信でもiPhoneという基盤が保てなくてはこうしたサービス事業も危うくなりかねない。同社は18年10~12月期決算からiPhoneの販売台数の公表を取りやめている。