2019年9月23日(月)

フェイスブックCEO「少人数のつながりに活路」

2019/5/1 6:09
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【シリコンバレー=中西豊紀】米フェイスブックは30日、個人情報保護に配慮した新たな事業戦略を発表した。友人や家族など、私的な少人数がつながる対話アプリや写真共有アプリを介した物販などを通じ、収益を増やしていく考え。不特定多数の個人から集めたデータを駆使するオンライン広告の拡大には触れず、実質的な事業モデルの転換が始まっている。

プライバシー保護を強調するザッカーバーグCEO(サンノゼ市)

プライバシー保護を強調するザッカーバーグCEO(サンノゼ市)

サンノゼ市で開かれた開発者向けイベント「F8」にマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)が登壇し、方針を示した。同社は不特定多数の人がつながる交流サイト(SNS)の「ニュースフィード」を事業の軸としてきたが、この日は「リビングルームのようなプライベート空間も必要だ」と戦略を転換する考えを強調した。

具体的にはメッセージの暗号化や、集めた個人データを一定期間後に消去すること、データの安全な保管など6つの指針をあげ、それを前提にサービスを作り込むとした。2018年3月に発覚した英コンサルティング会社による8700万件もの個人情報の流出を教訓にしたもようだ。

特に前面に打ち出したのが対話アプリの「メッセンジャー」と「ワッツアップ」の活用だ。これらアプリを使った他人とのメッセージは暗号化され「ハッカーや政府、さらに我々からも見られる心配がなくなる」とプライバシーへの配慮を強調した。

各アプリは写真共有アプリの「インスタグラム」を含めて対話機能が統合される。メッセンジャーで送ったメッセージをワッツアップで見ることなどが可能になる。

そのうえで、インスタグラムを使った物販を新たなビジネスモデルの一例としてあげた。インスタグラムの写真に表示された商品をユーザーがクリックすれば、すぐに支払いを済ますことができる。インドではワッツアップを使った暗号化送金が始まっており、これも応用できるとした。

ニュースフィードも使い勝手を変える。ザッカーバーグ氏は「過去5年で最大の刷新だ」と述べ、グループと呼ばれる趣味などを共有する少人数のひとたちが情報をシェアしやすいデザインにする考えを示した。

いずれのサービスも同社が過去の同イベントで発表してきた「人と人を徹底的につなげる」路線とは一線を画す。ザッカーバーグ氏は「未来はプライベートだ」と話し、少人数のつながりを軸としたサービスにかじを切ることへの理解を集まった開発者に求めた。

ただ、フェイスブックはニュースフィードを通じて集めた個人データを基に精度の高い広告を作り出すことで、収益を上げてきた企業だ。新方針は収益性を損ねる恐れがあるが、ザッカーバーグ氏は講演でそこには一切、言及しなかった。

情報流出の事件は米議会による同氏の公聴会呼び出しにまで発展し、会社の信用を大きく傷つけた。新規性よりも情報の保護に時間を割いた今回の発表は「社会の批判をかわす狙いもある」(イベントに参加したシリコンバレーの投資家)。

ザッカーバーグ氏は講演で「我々がプライバシーで高い評価を得ているとは思っていない。それでも、フェイスブックの次の章に向けてこれでやっていく」と述べた。今後、時間をかけて事業モデルを確立する手探りの姿勢もにじませた。

フェイスブックが人と人とのつながりが生むデータの価値に目をつけ、広告事業への参入を発表したのが07年の「F8」だった。それから12年、この日の発表はデータ経済にまつわるビジネスの流れを変えるのか。SNSの雄はいま、転換点を迎えている。

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