ゆく時代、静かに送る 皇居前に多くの人々
平成最後の日となった30日、皇居は小雨が降る中、静かな朝を迎えた。午前中の退位の儀式が始まる時刻には天皇、皇后両陛下に感謝を伝えようとする多くの人が皇居周辺に集まった。列島各地は「平成」を見送る思いを映したかのように多くで雨となり、人々からは過ぎ去る30年間への感慨や「令和」の時代に期待する声が聞かれた。
皇居前など
皇居・半蔵門前には30日午前9時ごろ、退位の儀式に訪れる皇族方を一目見ようと30人以上の人々が集った。雨が傘をたたく音が響く中、静かに到着を待った。

岐阜市から来た野村健さん(62)は「天皇陛下の退位を見届けられるのは一生に一度の経験」と笑顔で語った。新元号の「令和」も耳になじんできたといい、「平成は災害やテロなど激動の時代だった。令和は平和な時代になってほしい」と期待した。
東京都千代田区の中学1年の女子生徒(12)は「平成最後の卒業生として小学校を出たことは一生忘れない」と話す。運動会で平成の時代を組み体操で表現したといい「ベルリンの壁の崩壊など大変な時代だったと学んだ。見守り続けてくれた天皇陛下に『ありがとうございました』と言いたい」と話した。

警視庁はこの日、数千人態勢で警備に臨んだ。30日午後6時から5月1日午前5時は、皇居前広場への立ち入りを制限する。ドローン(小型無人機)に対処する部隊も展開し、車両突入テロを防ぐため交差点などには車両を配置した。
車の検問に加え皇居や赤坂御用地を含むエリア内では10~15分程度の交通規制を複数回実施。靖国通りや六本木通りなどへの迂回を呼びかけた。
東北の被災地
東日本大震災後に天皇、皇后両陛下が訪問された岩手県大槌町。津波で自宅を失った美容師の平野利美子さん(71)は30日、2年前から暮らす海岸そばの町営住宅でいつも通りの朝を迎えた。
平成最後の日を雨で迎えた町は10連休中ということもあり、3月に開通した三陸鉄道「リアス線」や海沿いのホテルが観光客らでにぎわっていた。
平野さんは長く仮設店舗で仕事を続けてきたが、今年2月には自宅近くの新たな店舗で営業を始めた。「平成のうちに新たな一歩を踏み出せてよかった」と笑顔を浮かべる。
津波は地域の人々の命を奪ったが、被災地を見守り続けられてきた両陛下の温かい思いに触れ、励まされてきた。「両陛下にはお疲れさまでした、と心からの感謝を伝えたい」と話した。

大阪・道頓堀
観光地としても知られる大阪・ミナミの繁華街、道頓堀は10連休を利用して訪れた人たちで混雑。ある土産店では「令和元年まであと1日」と書いたパネルを設置。多くの人が立ち止まり記念撮影していた。

「令和」の文字がプリントされたクッキーや「ありがとう平成」「こんにちは令和」と書かれたキーホルダーも販売。女性店員は「日本人だけでなく外国人にも人気で、売れ行きは好調」と話し、改元の盛り上がりを実感していた。
友人と大阪旅行中の大分市の女性会社員(24)は前日にユニバーサル・スタジオ・ジャパンを訪れ、この日は道頓堀を見物して帰る予定。「こんな大型連休は、あす始まる令和時代にはないかもしれない。最後の一日まで平成を楽しみたい」と笑顔で話していた。



