米のキューバ制裁強化、EUとの新たな火種に

2019/4/30 3:30
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【メキシコシティ=丸山修一】カリブ海の社会主義国キューバが米政府と欧州連合(EU)の新たな対立の火種を生んでいる。米政府がキューバ制裁を5月から一段と強化すると発表。多くの進出企業を抱えるEUが影響を懸念して反発を強めているからだ。対立が深まれば現在は共同歩調をとる南米ベネズエラの混乱解消にも遅れがでる恐れがある。

キューバ・ハバナの旧市街

「キューバで合法的に活動しているEUとカナダ企業に大きな影響を与える」。EUのモゲリーニ外交安全保障上級代表は米政府の制裁強化を受けて、同じく企業進出が多いカナダと共同声明を発表し米政府の決定を批判。「企業を守るために世界貿易機関(WTO)に訴える可能性がある」として米国の措置に全面的に対決していく姿勢を示した。

米政府はキューバ政府が革命後に接収した資産について米国内での損害賠償請求訴訟を5月2日から全面解禁する。すでに国務省の制裁リストにあるキューバ企業・団体への訴訟は可能になっているが、新たに対象を外国企業にも広げる。接収した土地を使ったホテルなどを管理・運営する場合にも訴訟対象になる可能性があるだけに外国企業は戦々恐々だ。

今回の制裁強化では当然、米国企業も影響を受ける可能性がある。しかし欧州やカナダがすぐに猛反発をみせたのは、キューバとの経済関係が米国に比べて非常に密接だからだ。キューバ国家統計局が公表している直近の貿易統計(2017年)によると、米国との貿易額は3億ドルと全体のわずか2%にすぎない。一方で欧州全域では39億ドルと32%を占める。

キューバ商工会議所によると18年11月時点で同国内に支店や代表事務所などの拠点を持つ外国企業は728社。欧州地域はトップのスペインが222社をはじめイタリア、仏、独などがトップ10に入るなど圧倒的な存在感を示している。スペイン系企業はホテルチェーンなど観光業の存在感が大きいが、製造業や通信など様々な分野での進出がみられる。

その一方で米国はオバマ前政権の"雪解け"時代に進出したデルタ航空をはじめとした航空会社やホテルチェーンなどわずか6社。革命後に親密だった旧ソ連が崩壊すると、旧宗主国のスペインをはじめとした欧州企業が次々と進出していったが、米政府が経済制裁を続けているために、目と鼻の先にもかかわらず米国企業の進出は大きく遅れている。

対立が深まれば、今回の措置は米国が目的とするベネズエラの混乱解決に逆効果になる可能性がある。双方とも暫定大統領への就任を宣言している野党指導者のグアイド氏を双方が支持するが、米政権が軍事介入をも辞さない強気の一方、欧州諸国は早期の大統領選挙実施や対話による解決を求め、温度差がある。制裁強化でその温度差が広がれば、一枚岩での圧力は難しくなる。

もともと米・EU間では対立が少なくない。4月上旬にもエアバス社への補助金を巡りトランプ米大統領が報復関税を課すと主張。すぐにEU側は対抗措置を辞さない姿勢を見せた。他にも鉄鋼・アルミを巡る追加関税や、自動車への高関税発動など多くの火種を抱える。ベネズエラ問題を巡っては中国やロシアの思惑も絡み複雑な状況になっている。米の今回の措置はそのパズルをますます難しいものにしたとも言えそうだ。

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