2019年8月20日(火)

アラブ湾岸産油国経済、低迷続く 脱石油改革に暗雲
高債務、財政自由度低く

2019/4/30 0:50 (2019/4/30 1:26更新)
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【ドバイ=飛田雅則】湾岸のアラブ産油国経済の停滞感が強まっている。国際通貨基金(IMF)は29日、地域経済見通しを発表し、サウジアラビアなど湾岸協力会議(GCC)の2019年の経済成長率を2.1%と18年4月の予想から0.5ポイント下方修正した。世界経済平均の3.3%を下回り、00~15年の平均成長率(4.8%)に及ばない水準だ。原油価格は14年のピークを下回る水準で経済状況が厳しいなか、各国は「脱石油」の困難な改革を進めざるを得なくなっている。

アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでは不動産の供給過剰に拍車がかかっている=ロイター

GCCの成長率は前年比で0.1ポイント増にとどまる。経済停滞の背景についてIMFの地域担当、ジハド・アズール氏は日本経済新聞に「米中の貿易摩擦などによる世界経済の不透明さや原油価格の変動、不安定な金融環境」を指摘した。

経済の変調があらわなのは、金融や貿易のハブであるアラブ首長国連邦(UAE)のドバイだ。原油高の時代に始まった大型開発が止まらず、不動産は供給過剰にある。ヤシの木を模した人工島「パーム・アイランド」にある真新しいビルに足を踏み入れると、空室が目立っていた。「賃料は1年で15~20%下がった」と地元の不動産業者は話す。

UAEの不動産調査会社の調査によると、ドバイの不動産取引件数は前年比約2割減った。外国からの直接投資が細り、企業活動が停滞した結果、不動産の物件取得の動きが鈍っている。貿易の減速は自由貿易港を抱えるドバイにとって大きな打撃だ。周辺産油国の富裕層による投資資金も低迷しているとみられる。

原油価格の国際指標である北海ブレント原油先物は足元で1バレル70ドル台前半と、ピーク時より約3割安い。中東の政治混乱から価格は乱高下しやすい環境になっている。直近ではサウジが加盟する石油輸出国機構(OPEC)やロシアなど非加盟国の協調減産が下支えし、イラン制裁に伴う供給不安も材料となって価格は持ち直している。しかし、需要増による押し上げではない。

電気自動車の普及など「石油の時代」に陰りが見えるなか、各国は石油に頼らない経済づくりの改革を進める必要がある。

過去の原油高を前提に湾岸諸国では政府が教育や医療など国民の生活を丸抱えしてきた。産油国の中には付加価値税(VAT)の導入などを進める動きもあるが、財政改革は途上にある。経済が停滞する中で財政を賄うため、外国からの借り入れが増加している国もある。

IMFによると、バーレーンの公的債務の国内総生産(GDP)比は19年末に100.2%と、00~15年の平均と比べて69ポイント増える見通し。オマーンは61.3%と同49ポイント拡大する見通し。GCC全体でも29.1%と同4ポイント増える見込みだ。

IMFは原油の輸出国だけでなく、緊縮財政の途上にあるアラブの原油輸入国の公的債務の増加にも警鐘を鳴らす。レバノンが157.8%、ヨルダンが94.8%、エジプトが86.9%と予想する。

IMFのアズール氏は「公的債務のGDP比が新興国の目安とされる70%を超す国が目立つ。利払い負担が増えるうえ、財政の自由度が下がり、優先度の高い分野に資金が回らなくなる」と指摘する。同氏は中長期的な経済成長につながるインフラ投資や福祉、教育、社会のセーフティーネット構築が遅れる懸念もあると述べた。

世界銀行によると、15~24歳の若年の失業率はサウジで25%に上る。雇用の受け皿となる民間部門の育成が急務だが、各国が進める「脱石油」の改革は今のところ、目に見える成果を生んでいない。

ムハンマド皇太子が改革を主導してきたサウジでは、18年10月の著名記者殺害事件を機に外資系企業が投資に二の足を踏んでいる。多くの国が改革の手本と位置づけていただけに、影響はサウジにとどまらない。

市場では「改革を進めるには4~5%の成長を維持する必要がある」と指摘する声が上がる。サウジのムハンマド皇太子は19年予算で財政拡大を表明しており、改革の先行きに不透明感が出ている。

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