2019年8月22日(木)

欧州政治、内向き脱せず スペイン総選挙「極右」躍進
EU懐疑派に勢いも

2019/4/29 20:37
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【マドリード=白石透冴】28日投開票のスペイン総選挙で、サンチェス首相率いる中道左派の社会労働党が勝利した。最低賃金引き上げなどが支持されたが、過半数には届かず、連立交渉を本格化させる。一方、厳しい移民対策を訴えた極右政党も躍進した。英国の欧州連合(EU)離脱問題などで欧州各国で内向き傾向が強まる。5月下旬の欧州議会選に向け、欧州統合の求心力を維持できるか正念場を迎える。

総選挙で第1党を確実にした社会労働党のサンチェス首相(28日、マドリード)=AP

総選挙で第1党を確実にした社会労働党のサンチェス首相(28日、マドリード)=AP

スペインの社会労働党は下院350議席中、123議席を獲得して第1党になった。サンチェス首相は「我が党は勝利し、過去(の政治)は敗れた」と宣言した。少数与党で予算案が通らず、2月に解散に追い込まれたが、改選前(84)から大きく議席を伸ばした。

18年まで政権を担った国民党の緊縮財政で、国内の格差問題への不満が広がっていた。今回の総選挙の争点は生活向上策や移民問題。サンチェス氏は最低賃金の引き上げや生活保障の拡充を掲げた。社会労働党に票を投じたマドリードの会社員の女性(47)は「今、必要なのは不平等を正す政治だ」と語った。

もっとも社会労働党の議席は過半に届かず、今後は連立や閣外協力が本格化する。急進左派ポデモスと連携を探るとみられるが、それでも過半数には届かない。地方系の少数政党の協力は不可欠で、特に独立運動がくすぶる北東部カタルーニャ色の強い2政党との交渉の行方に注目が集まる。

親EU路線のサンチェス氏の勝利は本来、EUの結束にはプラスになるはず。だが今回の総選挙では新興の極右勢力が躍進し、こうした期待に冷水を浴びせた。

総選挙で24議席を獲得した極右政党ボックスのアバスカル党首(28日、マドリード)=ロイター

総選挙で24議席を獲得した極右政党ボックスのアバスカル党首(28日、マドリード)=ロイター

「これは始まりにすぎない」。新興の極右勢力ボックスのアバスカル党首は、勢力拡大に意欲をみせる。同党は初めて国政進出を決め、獲得した議席数は24に達した。

1975年の死去まで実権を握った独裁者フランコの苦い記憶から、有力な極右政党が出てこなかったスペイン。ボックスの躍進は歴史的な転換点を迎えたことを示す。

欧州に広がる極右勢力はこの動きを歓迎する。フランスの極右政党「国民連合」のルペン党首はツイッターで「国家には強い熱意で国を守る人物が必要だ」とボックスの議席獲得を祝福した。

5月23~26日には5年に1度の欧州議会選が開かれる。イタリア、フランスなどからスペインにまで波及したEU懐疑派の勢力拡大が見込まれており、EUの結束が揺らぐおそれもある。

スペイン総選挙ではサンチェス氏が手厚い福祉政策を訴えて勝利した。EU統合の深化よりも、内政に集中せざるを得ないのは欧州主要国に共通する現象だ。

フランスのマクロン大統領は反政権デモ「黄色いベスト」の勢いに押され、25日に大規模な減税策を発表した。国民との直接対話に時間を割き、対外政策は停滞した。ドイツも反移民を訴える極右政党の台頭を抑えるために、寛容な移民政策の修正を余儀なくされた。

EU離脱問題の出口が見えない英国では、早期の離脱を訴える政党が勢いを増す。欧州各国で強まる内向き志向は、EU懐疑派をさらに勢いづかせる可能性をはらむ。

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