大島の作品 瀬戸内国際芸術祭2019

2019/4/28 18:41 (2019/7/25 9:27更新)
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(1)田島征三「青空水族館」★★★★

ハンセン病療養所の寮だった建物を改装した。青い海の向こうで人魚がおはじきでできた涙を流し続け、床におはじきが落ちる度、かつんと音がする。別の部屋では魚の絵や彫刻が泳ぐように展示され、綱を引くと無数のペットボトルでできた巨大魚が動く。アイデアあふれる水族館だ。

(2)田島征三「森の小径」★★★

寮の庭を整備した。島に自生する植物を主に植えている。かつて療養所の入所者が山で見たであろう植物が今は島への訪問者を楽しませている。

(3)田島征三「『Nさんの人生・大島七十年』―木製便器の部屋―」(新作、夏秋のみ)★★★★

16歳でハンセン病の療養所に連れてこられた男性「Nさん」の生涯を、入所者寮だった長屋の5つの部屋に表現した。強制的に働かされ、重症患者のために木材で便器を作り続けたこと。妊娠した妻が中絶を強いられたこと――。言葉を失う悲痛な証言ばかりの中で、夫婦の絆をいとおしむ言葉が胸を打つ。

(4)やさしい美術プロジェクト「稀有の触手」(新作、夏秋のみ)★★★

「稀有の触手」とは、大島の歌人が詠んだ歌に出てくる言葉。生きることの頼りとなる、舌や唇の感覚をこう表現したのだ。作品は、大島のとある写真愛好家が遺した撮影のための自助具などを陳列。別のカメラ愛好者を写した写真も展示する。彼らの生きること、表現することへの執念を感じさせる。

(5)やさしい美術プロジェクト「{つながりの家}GALLERY15『海のこだま』」★★★

寮の建物を改装し、島で使われていたという船を屋内に展示。青いペンキがはげ、ぼろぼろになった船と廃屋のような屋内の雰囲気が溶け合う。大島に生きた人々の記憶が込められている。

(6)山川冬樹「歩みきたりて」★★★★★

終戦後、モンゴル抑留中にハンセン病が発覚した歌人、政石蒙の生涯を映像、ナレーション、史料、遺品などで振り返る。ハンセン病に人生を翻弄された一人の歌人の魂の叫びがここにある。

(7)山川冬樹「海峡の歌/Strait Songs」(新作、夏秋のみ)★★★★★

作家が高松市・庵治から大島まで泳いだ様子を自ら撮影。息づかいと水をかく音に、庵治の子供たちの声が重なる。読み上げるのは、大島の人が詠んだ歌だ。大島から自由を求め泳いで庵治を目指し、命を落とす人が後を絶たなかったという。悲しい記憶を、未来の光へと接続する大胆な表現手法に驚かされる。

(8)鴻池朋子「リングワンデルング」(新作)、「月着陸」(新作)、「物語るテーブルランナーin大島青松園」(新作、夏秋のみ)★★★★

大島の北端には戦前、入所者たちが切り開いた全長約1.5キロの遊歩道がある。長く閉ざされていた遊歩道を「リングワンデルング」として復活させた。方向感覚を失った登山者が無意識に円を描くように同じ所をぐるぐるさまようことを意味するドイツ語だ。「月着陸」は島の様々な風景や動植物を映し出し、作家自身が海に入って歌う。「テーブルランナー」はハンセン病療養所の入所者や職員、看護師らから聞き取った思い出を下絵にし、手芸愛好家が立体感のあるランチョンマットに仕上げた。物語は手から手へと渡されるうちに、手触りのあるものになったのだ。語られる思い出の中には、施設内のイベントなど明るいものも多くあり、心がじんわりと温まる。

(9)やさしい美術プロジェクト「{つながりの家}カフェ・シヨル」★★★

大島の社会交流会館内にあるカフェ。大島産の果物を使った飲み物やお菓子を提供する。ゆったりとした時間を過ごせる。(8)の「月着陸」の映像はここで鑑賞することができる。

(10)クリスティアン・バスティアンス「大切な貨物」(秋のみ)★★★★

長い間隔離されてきた大島のハンセン病患者をテーマにしたモノクロの映像作品。庵治(あじ)第二小学校の体育館が会場。オランダ出身のアーティスト、クリスティアン・バスティアンスが、美しい海や満開の桜といった島の情景を織り交ぜながら、患者たちの悲惨な体験を映像インスタレーションの手法で表現している。ノルウェーの有名女優、リヴ・ウルマンが出演。コンクリートの閉鎖空間をさまようように歩きながら、ナレーションで一つ一つ言葉を紡いでいる。遺体解剖の承諾という悲しい歴史を物語る「解剖台」の映像が胸を締め付ける。

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