映画『RBG 最強の85才』 闘う女性最高裁判事の素顔
恋する映画 性差別に向き合うドキュメンタリー

いまでこそ、女性の社会進出も当たり前になっているものの、その過程は多くの先人たちによる闘いの歴史ともいえるもの。そこで、これまでに数々の功績を残し、現代の女性の可能性を切り開いた一人として、米国で高い支持を得ている女性に迫ったドキュメンタリー『RBG 最強の85才』をご紹介します。
米国でフィーバーを起こした「RBG」の素顔とは?
まず、タイトルにある「RBG」とは、本作の主人公であるルース・ベイダー・ギンズバーグの頭文字を取った名称のこと。日本では名前だけでわかる人は多くないかもしれませんが、女性の地位向上や性差別に長年向き合い続け、今年3月に86歳を迎えたいまなお現役の最高裁判事として活躍している女性です。

米国で最上級の裁判官とされる最高裁判事は9人で構成され、大統領による指名によって選出される重要なポジション。ルースは弁護士としてさまざまな裁判を経験したのち、1993年に女性では史上2人目となる最高裁判事に指名されます。以降、第一線を走り続けており、現在の構成員のなかでも最高齢ながら、もっともパワフルといわれている存在です。
通常、「最高裁判事」という肩書は近寄りがたいと感じるところですが、それさえも覆してしまうのがルースの魅力。「RBGブーム」なるものを巻き起こし、彼女のTシャツやマグカップといったグッズだけでなく、ものまねタレントまで登場するほど、国民的なアイコンとして米国で愛されているのです。
世代と国境を超えて共感を得るルースの生き方
本作では、アイドルも顔負けの絶大な人気を誇るルースの素顔や彼女の原動力、そして内に秘めた強さをさまざまな視点から見ることができます。働く女性なら、ルースの仕事への向き合い方やウイットに富んだ会話術は、ぜひとも参考にしたいところ。アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたのをはじめ、各国の映画祭でも高い評価を得ていますが、穏やかな語り口ながら、核心をついた言葉の数々は、国や文化を超えて響くものがあるはずです。

さらに、彼女の生き方を語るうえで、欠かせないのは夫であるマーティン。学生結婚をしたのち、ともに弁護士として成功を収め、公私にわたって支え合ってきたおしどり夫婦として知られています。控えめなルースと陽気なマーティンという一見正反対のような2人。ですが、お互いを思い合い、足りないところを補い合いながらトップへと昇っていく唯一無二の夫婦愛には胸を打たれます。女性にとっては、まさに理想の夫像と感じる人も多いはずです。
そんな2人の若き日の様子や葛藤を知ることができるのは、現在公開中の映画『ビリーブ 未来への大逆転』。ルースのおいが脚本を手がけたこともあり、彼女の協力を得ながら事実を基に描かれた作品となっています。背景や状況への理解もより深まるので、本作の前に鑑賞するのがオススメです。
新たな時代において働く女性の可能性を切り開く
いまよりも女性が厳しい状況に置かれていた時代のなかでも、道なき道を歩き続けたルース。仕事への真摯な姿勢や家庭との両立についてなど、ルースの生き方はあらゆる女性たちに希望を与えてくれます。

男性社会でのし上がる女性といえば、自己主張の強い女性が典型のように思われがちですが、どんなときも穏やかなルースを見ていると、必要なのは気の強さよりも、信念を貫く強さ。そして、彼女が大切にしている母親からの言葉に「淑女であること」と「自立すること」の2つが挙げられていますが、まさに現代の女性にとっても、心に留めておきたい教えといえそうです。
いよいよ日本も「令和」という新しい時代へと突入。まだまだ女性として闘わなければいけない場面に遭遇することもありますが、新たな分岐点となる時期だからこそ、ルースのようにぶれることのない女性の姿から、生涯現役の秘訣と自分らしさを追求することの意義を学んでみては?
監督・製作:ジュリー・コーエン、ベッツィ・ウェスト
出演:ルース・ベイダー・ギンズバーグ、ビル・クリントン、バラク・オバマほか
主題歌:「I'll Fight」ジェニファー・ハドソン
配給:ファインフィルムズ
5月10日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
(C)Cable News Network. All rights reserved.
【ストーリー】
若き弁護士時代から、一貫して女性やマイノリティーの権利発展に身をささげてきた「RBG」ことルース・ベイダー・ギンズバーグ。これまでにいくつもの裁判で勝利し、米国の法を変えてきた彼女は、最高齢の女性最高裁判事として現在も活躍している。若者を中心に絶大な人気を誇るルースがいかにして誕生したのか。愛する家族や友人、同僚によって、彼女の知られざる素顔が明らかとなる……。
(ライター 志村昌美)
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