球場が呼んでいる(田尾安志)

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「オープナー」は日本球界に合っているか

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2019/4/28 6:30
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各チームが勝ちパターンの投手を最低でも3人用意するのは、終盤3イニングを無事に乗り切るため。日本ハムの加藤は終盤3イニングの担当ではないが、先発陣の士気に関わる点でもオープナーはあまり効果的な策とはいえず、日本では浸透しないのではないか。

先発投手の起用を巡っては、別の試合でも考えさせられることがあった。4月17日、阪神の矢野燿大監督は、ヤクルト相手に無失点の好投を続けていた先発の青柳晃洋を7回で代えた。球数は111。一般的には順当といえる交代なのだろうが、試合を解説していた私は違和感を覚えた。というのも、この日の青柳は尻上がりに調子を上げていた。真ん中に投げても打たれないから、どんどんストライクが取れる。六回と七回はむしろ序盤より球威があり、ともに三者凡退、ウラディミール・バレンティンらから計3三振を奪った。

阪神・青柳は4月17日のヤクルト戦で7回111球で交代も尻上がりに調子を上げていた=共同

阪神・青柳は4月17日のヤクルト戦で7回111球で交代も尻上がりに調子を上げていた=共同

青柳に代わって八回に登板した能見篤史は2四球を与えて降板。ピンチで3番手が打たれて2-2と追い付かれ、そのまま引き分けに終わった。この日は抑えのラファエル・ドリスが体調不良で使えず、ただでさえリリーフ陣が厳しい状況。そこで青柳が完璧な投球を見せたから、これは八回も投げるだろうと思ったのだが……。

監督というのは相手が何を嫌がるかを考えるもの。この試合でヤクルトが最も恐れたのは青柳の続投だったのではないか。好投する投手がいなくなって「よし」と思ったのは、前述した西武・辻監督のケースと同じだ。

■数字よりも大事なもの

7回111球という数字が交代の判断材料になったのだろう。ただ、考えてみてほしい。4月の暑くない時期に、25歳と若い青柳がたかだか111球で「疲れてもう投げられません」とは言わないはず。中6日と前回からの登板間隔も十分に空いている。何よりイニングを重ねるごとに内容が良くなり、本人の気分が乗っている。そこで首脳陣から「おまえに任せた」と試合を託されて意気に感じ、まだ経験のないプロ初完投、初完封でもすれば大きな自信になったはず。続投の決定に数字以外の根拠があれば、たとえ打たれたとしても本人も納得できる。

数字も大事だが、何よりも首脳陣が見るべきは目の前の状況。選手の調子や相手ベンチの心理を見極め、最善の判断を下すよう心掛けなければならない。

先発投手の降板のタイミングに関して100球を目安にするようになったのは、いつごろのことだったか。オープナーと同じく球数制限も大リーグにならって導入されたものだが、闇雲にまねるだけでは本質を見誤る。次々に世に出る新しい概念を取り入れつつ、刻々と変わる試合状況に応じて采配の「適時打」を放つ。そんなプロフェッショナルの姿勢は失ってほしくないものだ。

(野球評論家)

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