睡眠中に記憶を強化 米グループが実験

2019/4/27 4:30
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日経サイエンス

眠っている間に英語を聞くことで脳が学習し、目覚めたときにはペラペラになっている──。そんな「睡眠学習」の試みは米国で1920年代からブームになったが、その後、睡眠中に聞いたことは記憶されないことが実験で判明し、期待は急速にしぼんだ。だが最近の脳神経科学の研究から、睡眠は違う形で記憶を強化していることがわかってきた。

睡眠中にはレム睡眠とノンレム睡眠が交互に現れる。ノンレム睡眠の中でも特に深い徐波睡眠のときに記憶にかかわる紡錘波などが生じ、日中の記憶が再生されて脳内に定着するようだ

睡眠中にはレム睡眠とノンレム睡眠が交互に現れる。ノンレム睡眠の中でも特に深い徐波睡眠のときに記憶にかかわる紡錘波などが生じ、日中の記憶が再生されて脳内に定着するようだ

人は起きている間に得た記憶を、眠っている間に脳内で再生させることでしっかり定着させている。米ノースウェスタン大学のケン・パラー教授らのグループは、寝ている間にある音を聞かせることで、狙った記憶をより深く刻み込む実験に成功した。

まず被験者に、パソコンの画面に出てくる50種類の物の位置を覚えてもらった。その際、ネコなら「ニャー」という鳴き声、やかんなら「ピー」という音など、対象物と関係のある音を聞かせた。その後、被験者に仮眠を取ってもらい、ノンレム睡眠の間に起きる深い睡眠「徐波睡眠」の間に、先ほどの音を聞かせた。

目覚めた被験者たちに物の位置を聞くと、眠っている間に聞いた音に関連する物についてはよく記憶していた。「ニャー」という声を聞いた人はネコの場所を、「ピー」という笛を聞いた人はやかんの場所を思い出しやすかった。睡眠中に聞いた音が、その音に関連する物についての空間記憶を活性化し、定着させたとみられる。

これに先立って、独リューベック大学のグループが行った実験では、被験者に物の位置を記憶してもらいながら、バラの香りをかがせた。その後、眠っている間に一部の人に再びバラの香りをかがせたところ、匂いの刺激を受けた人は、受けなかった人より正確に物の位置を思い出すことができた。

睡眠中の脳刺激によって特定の記憶を増強できることを示す実験結果は、徐々に積み上がってきている。仏国立科学研究センターのグループは、マウスが睡眠中に特定の場所についての記憶を再生しているとき、快楽をもたらす報酬系を刺激した。目覚めたマウスは直ちにその場所に向かい、長時間とどまる傾向があった。また昨年、英米の2つのグループがそれぞれ、特定の記憶が増強される仕組みには、脳の中の視床が発する「睡眠紡錘波」と呼ばれる波が関わっていると報告した。

睡眠中に英語を話せるようになるという昔ながらの睡眠学習は無理でも、起きているときに覚えた英単語をしっかり記憶するという新しい形の睡眠学習は、いずれ可能になるかもしれない。

(詳細は現在発売中の日経サイエンス6月号に掲載)

日経サイエンス2019年6月号

著者 :
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,440円 (税込み)

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