日銀、強める緩和色 景気先行きに警戒
日銀は25日開いた金融政策決定会合で、超低金利を「少なくとも2020年春ごろまで」続ける方針を明示した。21年度でも2%の物価目標を達成できない見通しを受け、将来の政策運営を縛るという苦渋の対応を迫られた。世界経済の不透明感から、米欧の中央銀行が路線修正を模索し始めており、日銀も金融緩和姿勢をやや強める構えをみせた。
日銀は短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度にする金融緩和策については現状維持を決めた。変更したのは、金融緩和の継続性を表すために18年7月に導入した「政策金利の先行き指針(フォワードガイダンス)」だ。これまでは超低金利政策を「当分の間」は継続すると明記してきた。今回は海外経済の動向も注視し、超低金利を「少なくとも20年春ごろまで」続ける方針を明確にした。
黒田東彦総裁は25日の記者会見で、金融緩和の期間を明示すると政策運営の自由度を損なうリスクを認めたうえで、それ以上に「政策効果をより一層高める意味がある」と強調した。指針で20年春ごろとした期間も「それより先でもかなり長い期間にわたって継続する」と一歩踏み込んだ。
日銀が指針見直しに動いたのは、2%の物価目標達成になお時間がかかるとの認識を強めているためだ。同日発表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では21年度の消費者物価指数の上昇率(中央値)を1.6%と見込んだ。
今回の決定の裏には、今年に入って金融引き締め路線を修正している米欧中銀への意識もちらつく。米連邦準備理事会(FRB)は3月、15年末以降に計9回実施した利上げを年内は見送る方針を示した。今後、景気の息切れ感が強まれば利下げに動く余地を残す。欧州中央銀行(ECB)も3月に政策の先行き指針を変更し、年内の利上げを断念した。
米欧中銀が金融緩和に前向きな姿勢を強めれば、内外金利差が縮小するとの観測から円高が進む可能性もある。日銀も金融緩和の継続を強調することで、政策の手詰まり感を退ける狙いがある。
もっともマイナス金利の深掘りや国債の購入規模拡大などの追加緩和に踏み切ると、銀行の収益悪化や市場機能の低下といった副作用も大きくなる。日銀が本格的に動きづらい状況に変わりはない。当面は先行き指針の変更にとどめて景気や海外中銀の動向を見極めたいとの思惑も透ける。
関連企業・業界