未来面「あたらしい時代です。」

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安心で安全な食べ物、どうやって確保する?
中家徹・全国農業協同組合中央会会長 経営者編第2回(5月8日)

2019/5/8 2:00
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日本はいつまでも食料を安定的に確保できるかどうかを考えるべき時代に入りつつあります。食べ物をどれだけ国産でまかなえているかを示す食料自給率は、半世紀前にはカロリーベースで6割以上ありました。ところが昭和から平成に移るころに5割まで下がり、最近は4割程度の低水準で推移しています。

全国農業協同組合中央会の中家徹会長

全国農業協同組合中央会の中家徹会長

自給率と関係する指標に食料自給力というものがあります。国内の農地をフルに活用したとき、国民に必要なカロリーをどれだけ供給できるかを示す指標です。栄養バランスを考えて自給力を試算すると、すでに必要な量を確保できなくなっています。しかも自給率と違い、自給力は下げ止まっていません。

自給力の低下が示しているのは生産基盤の弱体化です。耕作放棄の増加や、農家の高齢化を担い手でカバーできていません。農村にいて一番敏感に感じるのはその点です。最近、農業生産額が増える年もありますが、生産基盤が弱くなったため、生産量が減って値段が上がったという実態もあります。

自然災害も懸念材料です。日本では豪雨や猛暑などが起きると例えば野菜が足りなくなり、価格が暴騰したりします。しかも天候不順に悩まされているのは日本だけではありません。日本は小麦や大豆などの大半を輸入していますが、各国で自然災害が同時に起きたらどうなるでしょう。世界の人口が増えていることもリスクを高めます。

こういう実態を多くの皆さんに知ってもらいたいと思っています。ただ難しいのは、今は日本で食べ物をいくらでも買うことができるので、危機感を抱きにくいという点です。大量の食品ロスを見ればわかるように、食べ物はむしろ余っています。でも実際に足りなくなってから「大変だ」と騒いでも遅いのです。

一方で明るい材料もあります。国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」は飢餓をなくし、栄養状態を改善し、持続可能な農業を推進することを柱の1つに掲げています。国連は2019年から28年までを「家族農業の10年」とすることも決定しました。農業に取り組み企業は増えていますが、日本だけでなく各国とも農業は家族経営が中心です。そのことに国連が光を当てたことに勇気づけられます。

ドローンや無人トラクター、AI(人工知能)の活用などスマート農業の普及で、生産性が格段に高まることなどが期待されています。農家の数が減る中、新しい技術で省力化が可能になるのは農業にとって追い風です。かつては考えられなかったようなことが、現実に起きようとしています。最新の技術もうまくいかして行かなければなりません。

私たちはどうすれば食べ物に困ることなく、豊かな食生活を維持できるでしょうか。日本の食と農の未来図をデザインしてください。

中家徹・全国農業協同組合中央会会長の課題に対するアイデアを募集します。投稿はこちらから。

■編集委員から 日本はかつて経験したことのない「飽食の時代」の中にあります。レストランや小売店、そして家庭でまだ食べられるにもかかわらず、たくさんの食べ物が捨てられています。大量に余っているものは当然、値段が安くなります。だから農業で利益を出すのは簡単ではありません。多くの農家が後継者不足に悩まされているのはそのためです。これが豊かな食生活の影で静かに進行している危機の姿です。

では困っている農家に政府が補助金を出すだけで、持続可能な農業は実現するでしょうか。食料危機のリスクを強調するだけで、事態が好転するとも思えません。中家会長はインタビューでスマート農業に触れましたが、大切なのは生産者一人ひとりがわくわくするような未来を描くことでしょう。そして消費者がもっと農業を身近に感じることのできるような制度やサービスも必要です。農村と農業に対する消費者の共感こそが、危機を防ぐ手がかりになるはずです。(編集委員 吉田忠則)

◇   ◇

未来面は、日本経済新聞社が読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。今回の課題は「安心で安全な食べ物、どうやって確保する?」です。皆さんからの投稿を募集します。5月16日(木)正午が締め切りです。優れたアイデアを経営者が選んで、次号5月27日(月)付の未来面や日経電子版の未来面サイトで紹介します。

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