テスラ襲う成長痛 輸出急増で混乱、3四半期ぶり赤字

2019/4/25 14:02
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【シリコンバレー=白石武志】米電気自動車(EV)メーカーのテスラが急成長に伴う痛みに苦しんでいる。年明けに中国や欧州への輸出を始めた量産車「モデル3」の税関手続きなどに手間取り販売台数が急減。24日に発表した2019年1~3月期決算は3四半期ぶりの最終赤字に転落した。グローバルな量産車メーカーを目指すには、まだ多くの課題が残る。

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「これまでで最も難しい問題だった」。勝ち気で知られるイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)だが、24日の電話会見ではどこか疲れた様子で過去数カ月間の苦闘を振り返った。

18年末まで米国とカナダに販売地域を限っていたモデル3の輸出を本格化したのは19年1月から。マスク氏は2月には米サンフランシスコの港にずらりと並んだ欧州向けの約4000台のテスラ車の写真をツイッターに投稿し、海外展開への期待感を示していた。

テスラでは10万ドル前後する高級EVの「モデルS」や「モデルX」については欧州や中国、日本などへの輸出を始めている。ただ、3万5000ドルからと同社初の普及価格帯の車種であるモデル3は海外でも人気が高く、ピーク時の輸出台数は従来の5倍の水準に達した。経験のない規模の手続きに対応しなければならず、出荷が大幅に遅れたという。

テスラがカリフォルニア州に構える完成車工場では、19年1~3月期の前半に中国や欧州向けのモデル3を生産し、後半に米国向けを生産した。輸出分が各国に届くのが遅れたことで、期中に販売した約6万3000台のうち、およそ半数は3月下旬のわずか10日間で納車にこぎ着けるバタバタぶりだったという。

テスラでは新型車の中国などへの輸出が難航した=ロイター

テスラでは新型車の中国などへの輸出が難航した=ロイター

多くの輸出向け車両の販売台数への計上が翌期にずれ込んだことで、19年1~3月期の売上高は45億4146万ドルと前の四半期に比べ37%減った。収益構造の改善に向けた人員削減や店舗閉鎖などのリストラ費用も重なり、最終損益は7億213万ドルの赤字(前年同期は7億955万ドルの赤字)に沈んだ。

テスラはモデル3を中心に世界各地で多くの予約客を抱えており、販売減は一時的としている。19年4~6月期の世界販売台数は9万~10万台と過去最高の水準に回復すると見込んでおり、19年通期の世界販売も36万~40万台になるとの従来予想を据え置いた。

高級車でブランド力を固め、量産車へと品ぞろえを広げることで成長を遂げてきたテスラだが、自動車業界で異なる価格帯の車種を1つのブランドで手掛けて成功した例は少ない。テスラでもモデル3の販売拡大に伴い、モデルSとモデルXの19年1~3月期の販売台数は前の四半期の半分以下に落ち込んだ。英金融大手バークレイズのブライアン・ジョンソン氏は「ブランド内のカニバリゼーション(需要の奪い合い)の影響を示すものだ」と指摘する。

量産車メーカーへのハードルはなお高い。次の関門となりそうなのが19年中の稼働を目指す中国・上海の新工場だ。テスラにとっては初の米国外の生産拠点。米国とは異なる文化や言語の中で人材を採用し、サプライチェーンなどを構築しなければならず、グローバルな事業運営の実力が試されることになる。

ただ、米国で車載電池を共同生産するパナソニックは中国新工場での協力には慎重で、テスラは今も電池のサプライヤーを決めきれていない。当面は米国や日本などから部品をかき集めて賄う方針で、輸送費などのコスト負担が採算を悪化させる可能性もある。

4月に開かれた上海国際自動車ショーでは、独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタ自動車などの自動車大手が本命と位置づけるEVを相次ぎ発表した。世界最大のEV市場となった中国では「テスラキラー」と呼ばれる新興EVメーカーも力を付けている。先行するテスラといえども、足場固めに残された時間はそれほど多くない。

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