関空連絡橋事故 運航会社ら船長と情報共有せず、安全委が報告書
運輸安全委員会は25日、関西空港で2018年9月、台風21号の影響でタンカー「宝運丸」が連絡橋に衝突した事故の調査報告書を公表した。宝運丸の所有会社や運航会社が、台風の進路やいかりを下ろす停泊場所について、船長と情報を共有していなかったと指摘。船長の予測を超えた風雨に見舞われ、いかりが利かない「走錨(そうびょう)」状態に陥ったと結論づけた。

船長はいかり1つで停泊する方法を選択していたが、安全委は当時の天候状況を分析した結果、走錨を防ぐにはいかりは2つとも使うのが適切だったとした。再発防止策として、悪天候からの避難で停泊する際は、いかり2つの使用を基本とするよう呼びかけている。
事故は2018年9月4日に発生。連絡橋付近に停泊中だった宝運丸が強風を受けて連絡橋に衝突し、空港が孤立する原因となった。
報告書によると、所有会社の日之出海運(福岡市)は運航を日常的に船長に任せ、事故当日も走錨が起きた場所で停泊している事実を把握していなかった。運航会社の鶴見サンマリン(東京・港)も運航の実務に関与していなかった。
船長は事故前日に発表された気象情報をもとに、台風が停泊場所の東側を通過し、強風は続かないと予測。海上保安庁は悪天候の際、関空の5.5キロ以内の海域では停泊しないよう求めていたが、船長は認識していなかった。
安全委は運航会社に対し、最新の気象情報を入手し、停泊位置を柔軟に変更するなど船員らが運航計画を見直しやすい体制をつくるよう勧告。海保や関係省庁には、災害前に各地の海域環境の情報を海洋関係者らに知らせることを徹底するよう求めた。