2019年7月21日(日)

命の重さ、次代に継ぐ 先輩失い救急の道に
JR福知山線事故から14年

関西
2019/4/24 22:04
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JR福知山線脱線事故で亡くなった中学・高校の先輩の死を機に、看護師になった男性がいる。大阪市の前中夕紀さん(31)。今年4月、救急医療に携わる看護師の育成を目指し、天理医療大の助教に就いた。教壇で看護師の卵たちに命の大切さを伝えたいと思う。

事故で亡くなった下浦善弘さんの遺影の前で涙ぐむ前中夕紀さん(14日、神戸市北区)

前中さんは三田学園中学・高校(兵庫県三田市)の柔道部に所属。亡くなった下浦善弘さん(当時20)は3学年上の先輩で、手本のようにきれいに技をきめる姿はあこがれの存在だった。

高校3年時の登校中に悲報を知った。現実を受けとめられず、授業中も机に伏せて泣いた。「命のはかなさを痛感し、事故を前に何もできなかった自分の無力さに悩まされた」。当時は芸術大学への進学を考えていたが、先輩の死をきっかけに「事故や災害で犠牲になる人や、悲しむ人を一人でも救いたい」との思いが募った。

選んだのは看護師だった。2012年から大阪府立急性期・総合医療センター(現在の大阪急性期・総合医療センター、大阪市住吉区)で勤務。当初は手術室に配属されたが、上司に直談判し、救急医療に配属。災害派遣医療チーム(DMAT)にも入った。

生死をさまよう患者と向き合う日々。予期せぬ死に動揺する家族に話しかけるタイミングや言葉の選び方に気を配るうちに「こうした経験を次世代に伝え、災害や救急医療に貢献できないか」と考えるようになった。

16年に大阪大大学院に入学。4月から天理医療大の助教として、学生らの授業をサポートする。

4月中旬、下浦さんの自宅を4年ぶりに訪れた。「先輩、教育の道に進みました」。大粒の涙を流しながら霊前に報告する前中さんを見て、父親の邦弘さん(70)は「信念を貫いて立派だ」と目を細めた。

「先輩に『よう頑張った』と声をかけてもらえるよう、育成に全力を注ぎたい」。前中さんは亡き先輩に誓う。

(高橋彩)

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