巨大IT規制、GAFAへの影響は? 成長鈍る懸念も
巨大IT(情報技術)企業はインターネット通販サイトやアプリストアなどをテコにした急成長が鈍る懸念もある。新規制によって事業モデルに一定の制約がかかる。
「ポイント還元の販促効果よりコスト増が重い」「ポイント費用分の値上げをせざるを得ない」。アマゾンジャパン(東京・目黒)は2月、出品事業者用のサイトで新たなポイント還元策を通知した。出品事業者が原資を負担して全商品にポイントを付ける内容。事業者の反発が広がった。
規約変更の通知が一方的で、出品者の同意をきちんと取れていなかったことが問題視された。公正取引委員会が独占禁止法が禁じた「優越的地位の乱用」にあたる可能性を指摘し、業界の一斉調査に乗り出した。批判を受けアマゾンは4月10日に全商品にポイントを付与する施策を撤回した。
政府は規制案で取引条件の開示を義務付ける新法をつくる方針を示した。IT大手は取引条件を変更する際に丁寧な説明が求められるようになる。事業環境の変化に対して、臨機応変な対応が難しくなる可能性もある。
日本の既存規制は欧州の一般データ保護規則(GDPR)に比べて軽く、米IT大手にとってグローバル戦略上の警戒度は低かった。2018年11月の政府有識者会議の聞き取り調査では、フェイスブックとアマゾンが出席を見送った。
政府による規制強化の流れが広がるなか、日本市場への対応に変化の兆しもみられる。アマゾンジャパンは昨年12月に経団連に加入した。消費者の利便性を追求することで成長を続けてきたプラットフォーマー。当局や業界団体を含めて幅広い利害関係者への目配りが不可欠になっている。

データ資源は21世紀の「新たな石油」といわれる。企業や国の競争力を高め、世界の経済成長の原動力となる。一方、膨大なデータを独占するIT(情報技術)企業への富と力の集中や、人工知能(AI)のデータ分析が人の行動を支配するリスクなど人類が初めて直面する問題も生んだ。
連載企画「データの世紀」とネット社会を巡る一連の調査報道は、大きな可能性と課題をともにはらむデータエコノミーの最前線を追いかけている。