2019年6月16日(日)

巨大IT規制、多面的に 成長との両立はかる

経済
2019/4/24 21:18
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政府は24日、プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT(情報技術)企業に対する規制のうち、公正な競争を求める案をまとめた。取引条件の開示義務に加え、独占禁止法での処分も盛り込んだ。25日には個人情報保護法改正に向けた原案も公表する。企業活動や消費者の利便性と調和を図りつつ、巨大IT企業を多面的に規制していく方針がみえてきた。

政府は現在、公正競争、個人情報保護、デジタル課税という3つの政策的な観点から巨大IT企業の規制を検討している。

公正競争の規制案は経済産業省、公正取引委員会、総務省と有識者が合同で協議する「デジタル・プラットフォーマーを巡る取引環境整備に関する検討会」がまとめた。データ寡占の防止や中小企業との取引適正化などが目的だ。今後は年央に出す政府の成長戦略に向け、各省庁が制度の具体化を進める。

巨大IT企業はグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムを示す「GAFA」などが代表例だ。利便性の高いSNS(交流サイト)やネット通販、動画・音楽配信などを手掛けて急成長を続けるが、近年はその負の側面にも注目が集まる。

例えばネット通販モールに出品する中小企業に対し、不利な取引条件を押しつけているとの懸念がある。公取委が巨大IT企業の取引先企業に実施した調査では「規約を一方的に変更され不当な不利益を受けている」との声が多く上がった。

巨大IT企業は当初「場の提供者」にすぎないと位置づけられてきたが、その存在が消費者に広く受け入れられるようになった。扱う商品やサービス内容も膨大に増えており、取引先企業に対しても強い影響力を持つようになっている。

取引企業の多くは守秘義務契約などに縛られて外部に窮状を訴えにくい。巨大IT企業はビジネスモデルが目まぐるしく変化するという性質も持つ。このため政府は独禁法の運用を見直し、今後は強制力を持つ「40条調査」も含めて業界全体の実態把握を定期的に進める方針だ。

取引条件の開示を義務付ける新法もつくる方針だ。企業に自主改善を促しながら段階的に規制を強めていくなど、独禁法を補完する役割を担う。まず開示方法を行動規範として定めさせ、対外的に説明させる体制をつくる。法律や行動規範に違反した場合の初期対応として、該当する企業名や問題行為を公開し、自主的な改善を促す。

ネット通販などインターネットを通じたビジネスは、消費者や取引先の評判に左右されやすい。政府は社名公表が一定の自主改善を促す効果があるとみる。

公表後も改善されない場合は、新法に基づき業務改善命令など行政処分で対応する。それでも対応が不十分なら、企業規模や取引の依存関係などで優位にある企業が取引相手に不利な条件を押しつける独禁法上の「優越的地位の乱用」を適用して処分する方針だ。

巨大IT企業の活動を抑制するような規制を強めるほど成長の勢いがそがれ、利用者の利便性が低下したりコスト負担が増したりする恐れがある。有望な市場の成長や技術革新を阻む懸念があり、政府はそうした副作用を抑えるように規制していくことになる。

この規制案の厳しさは、欧州と米国の中間に位置する。欧州連合(EU)は競争法(独禁法)で高い課徴金の納付を命じるなど厳しい規制を持つ。逆に、多くの巨大IT企業の発祥の地である米国は取り締まり強化に慎重だ。日本は処分の前段階として「取引の透明化」に重きを置き、規制と成長の両立を図る。

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2019/4/25 8:04

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