2019年6月20日(木)

キャッシュレス決済は「東高西低」(もっと関西)
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関西
2019/4/25 11:30
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先日、大阪市内でタクシーに乗ろうとしたら、交通系ICカードが使えないことに驚いた。支払いが現金のみの居酒屋も多い気がする。インバウンド(訪日外国人)が急増する関西では中国の「アリペイ」などスマートフォン(スマホ)決済を百貨店などが導入する話をよく聞くが、本当にキャッシュレス化が進んでいるのか。取材をしてみた。

4月上旬の梅田駅前。昼食を取るため、財布を持たずスマホ片手にオフィスを出た男性会社員(27)はレストランで会計できず恥ずかしい思いをした。「転勤前の東京ではこんなことはなかった。大阪は電子決済が使える場所が少なくて不便だ」とぼやく。

日本経済新聞と日経BP社が全国1万人の消費者に日々の買い物で使う金額のうち、キャッシュレスで支払う割合を聞いた。都道府県別の1位が千葉県で48.51%だった。3位が東京都(48.44%)、5位が神奈川県(46.41%)と首都圏勢が上位を占めた。

関西勢は兵庫県(45.71%)が7位だったが、大阪府(42.49%)は15位で全国平均(43.03%)を下回った。京都府(39.88%)は26位に沈み、キャッシュレス決済の普及度合いは「東高西低」の傾向がある。

大阪は現金払いだけの店が多い(大阪・十三の居酒屋)

大阪は現金払いだけの店が多い(大阪・十三の居酒屋)

なぜ関西はキャッシュレス化が遅れているのか。大阪商工会議所、流通・サービス産業部の湯谷康文次長は「大阪は個人事業者が多く、導入コストの負担が重い」と分析する。大阪シティ信用金庫によると、大阪府にある小規模企業の割合は84%と東京都を上回る。

決済端末を導入する初期費用は数万円かかり、これに加えて決済の度に手数料がクレジットカードは4~7%、スマホは約3%かかる。これらは店側の負担となるため、端末の導入が進まず、消費者の利用率も上がらない構図となる。

資金繰りのためキャッシュレス決済を避ける店舗もある。個人事業者は現金の売り上げを翌日以降の仕入れなどに回すことが多い。だがクレジット決済では現金が振り込まれるまでに1カ月の時間差がある。

消費者も「安さこそが正義」という価値観が根強い。高くて良いものを買うよりも、いかに安く買ったかを自慢するのだ。店側も決済にコストをかけるより、その分、安く商品を提供したい考えが浸透している。

百貨店などではスマホ決済の導入が進む(大阪市、あべのハルカス近鉄本店で)

百貨店などではスマホ決済の導入が進む(大阪市、あべのハルカス近鉄本店で)

キャッシュレス化が進む兵庫県では神戸市を中心にパン食など海外文化を積極的に取り入れてきた歴史があり、新サービス導入の抵抗感が低い。3月には球技場「ノエビアスタジアム神戸」が完全キャッシュレス化した。一方で京都府や奈良県では神社仏閣が多く、歴史的建造物と決済端末が雰囲気に合わないため導入を見送るケースがある。

キャッシュレス化は店舗の省力化や資金の流れが見えるようになるなどメリットが大きい。経済産業省はキャッシュレス決済比率を現在の約20%から2025年に40%に引き上げる方針を掲げる。政府は10月に予定する消費増税に合わせてキャッシュレス決済のポイント還元制度を設け、システム導入を後押しする。

大商も地域の商店街や商業施設を対象に「大阪キャッシュレス推進プロジェクト」を始め、決済サービス事業者を招いたセミナー・相談会を開催している。

倹約心の強い大阪商人にとってキャッシュレス決済にかかる費用は無駄であり、その分を消費者に還元したいという考えが根強いことが分かった。だがインバウンドが急増するなか、消費者の利便性は無視できないだろう。人手不足に苦しむ個人事業者にとって省力化も大きな利点となる。キャッシュレスの波は止められない。

(大阪経済部 下野裕太)

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